- 作者: 小島道裕
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/03/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 1人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
従来の信長論とは違い,戦国時代の構造や城下町のつくりから,信長が持っていた思想を説き起こそうとする作品です。
15世紀前半に,日本の経済は大きな落ち込みを経験します。その原因は,中央政府(京都の幕府)の求心力の低下により,京都にものが流れなくなり,地方独自の経済圏が確立したからだと説明されています。群雄割拠の戦国時代とは,このような経済の変化に対応した統治構造の変容であり,この時代にはいると今度は経済が上向きます。信長は再度中央の求心力を高める途を選びますが,筆者は必ずしも武力によって中央に強力な権力を生み出す必要はなかったのではないかと述べます。
本書を読んだ感想は2点あります。1つは,信長のいわばサクセスストーリーの代表である桶狭間や長篠の合戦は,現在流布しているイメージとは違う経緯をたどっているという部分についてです。こうした内容変更は明治期以降の軍国主義の中で戦国時代の出来事が都合良く解釈されたためでもあるようです。よく知っているはずの事件でも,再度考えてみる必要性は高いように思いました。もう1つは本能寺の変の原因分析です。末期の信長は本気で天皇の権力までも奪おうとしていたのか,今もってよく分かりません。ただ安土城のつくりの説明を読むと確かにそのような意図があったのかもしれないと思われます。本能寺の変もその後の秀吉の朝鮮出兵も,信長路線の必然であったという筆者の分析には,説得力がありました。