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Konstanz als Heimatstadt

田中弥生・NPOと社会をつなぐ

NPOの自主性を確保するためのシステムの側面に注目した研究書です。


1998年に制定された特定非営利活動促進法NPO法)は,一方ではボランティアなどの活動を促進するため,他方では介護保険などに代表される福祉・介護サービスの担い手を確保するためのものでした。現在は2万を超える数にまで増えています。
NPOに対しては社会の好意的評価の一方で,行政が下請として利用するだけなのではないかとする危惧が以前からありました。この問題に対して本書が提示するのが,インターメディアリです。これはNPOと寄付者などの資源提供者とをつなぐ役割をする組織のことであり,本書は欧米のインターメディアリの先進事例を分析・紹介することに多くの頁数を割いています。資金面におけるNPOの自立性確保策として,これまで我が国で主として議論されてきたのは,寄附控除の問題でした。これに対してインターメディアリの問題はなお正面から議論されたことがあまりなく,この論点を明示したことに本書の第一の意義があると思います。本書がもう一つ関心を持っている論点は,NPOの評価の問題です。一般理論としての評価方法の議論からはじまって,実際に欧米のインターメディアリが行っている評価についての紹介もなされています。