徴兵制廃止?
In der Union regt sich zunehmend Widerstand gegen Reformpläne von Verteidigungsminister zu Guttenberg: Amtsvorgänger Jung warnt vor einer Abschaffung der Wehrpflicht - diese habe sich als Bindeglied zwischen Truppe und Gesellschaft bewährt. Eine Aussetzung lehnt er ebenfalls ab.
Tagesschauの昨日付記事からです。
徴兵制と財政問題
よく知られるようにドイツでは兵役(Wehrpflicht)が定められています。一般的には中等教育が終わった年齢で兵役があり,その後大学に入ってくるので,ドイツの男子大学生は日本よりも一般に(少なくとも)1歳は年上になっています*1。
ドイツでは現在,徴兵制の廃止が議論になっています。その大きなきっかけは財政問題です。ドイツは今後5年間に財政赤字を圧縮することにしており,徴兵制に要する莫大な費用を削減したいというのが今回の議論の大きな理由になっています。ヨーロッパの中でも徴兵制を有する国はもはや少数派になっており,職業軍人だけで機動的に対応する方が好ましいという意見も強くなっています。
「戦後レジーム」としての徴兵制
これに対して,徴兵制廃止に最も強く反対しているのが与党のCDU/CSUです。徴兵制には大きな政治的意味があります。ワイマール期には軍部が国家組織から事実上独立した閉鎖的な社会勢力となり,それがワイマール共和国の崩壊の一因になりました。そこで国民全員が連邦軍を支える仕組みを構築することで,軍部の暴走抑制と社会の安定を図ろうとしたのです。その意味で徴兵制は一種の戦後レジームとも言えます。もし徴兵制を廃止すれば再びワイマール時代の過ちを繰り返すことになるのではないかという疑念を持つ政治家もいます。
この記事では連邦防衛大臣のzu Guttenbergが提案した徴兵制廃止案*2に対して前防衛大臣が強く批判をしたことが紹介されています。現在の防衛大臣はCSUですが,その中では珍しく徴兵制について柔軟な発想を持っているように見えます。
徴兵制は時代遅れ?
連邦防衛大臣でさえ徴兵制廃止に言及しなければならなくなった理由は財政問題だけではありません。冷戦時代であれば,兵役によって動員した軍人によって防衛力を強大にしておくことが自国の安全保障に繋がっていました。しかし現在では連邦軍の中心任務は海外での平和維持活動であり,この活動は職業軍人しかできないことになっているため,軍事資源の効率的な運用ができていないと指摘されています。兵役で軍事トレーニングしてもそのまま軍隊に残る人はごく少数派で,投資に見合う成果が全く得られていないとも言われます。日本における徴兵制の議論と同様に,徴兵制が若者に対する一種の教育効果を生んでいるという意見はドイツにも根強くあります。しかしこの点についても,兵役以外の方法でも達成可能ではないかと指摘されています。
ドイツにおける兵役義務の議論が今後どの方向に向かうのか予断を許しませんが,この議論は今後の安全保障をめぐるあり方を考える上で大きな手がかりを与えてくれるもののように思われます。