ゴッタルトトンネル
【ジュネーブ時事】スイス南部のアルプス山脈で掘削が進められていた全長56.7キロの鉄道トンネル「ゴッタルドトンネル」が15日,着工から約10年を経て貫通した。これにより,スイスとイタリアを結ぶ巨大プロジェクトの要所が完成。1985年に本坑が貫通した日本の青函トンネルが持つ約54キロの世界最長記録を25年ぶりに塗り替えた。
同トンネルはエルストフェルドとボディオの二つの町をほぼ直線でつなぐ。アルプス山脈の地下深くを南北に貫くことで平たんなルートとし,最高時速250キロでの運行が可能。2017年以降にスイス・チューリヒとイタリア・ミラノ間の所要時間を現在の3時間半から1時間程度短縮する計画だ。
貫通式はアルプス山頂の地下2300メートルのトンネル中央付近で行われ,多くの作業員らが見守る中,最後に残った厚さ1.5メートルの岩盤が掘削機で突き破られた。式に参加したロイエンベルガー運輸相は「プロジェクトを信じない人もいた。トンネル貫通で欧州の交通網が前進する」と成功をたたえた。
時事通信の昨日付記事からです。スイスからアルプス地域を抜けてイタリアにいたる鉄道のルートは大きく2種類ありますが,ゴッタルト峠越えは古くからのルートとして知られています。今から約100年前にループ線とトンネルの峠越えルートが開通しており,南北の重要なルートとしての地位を長く保っていました。しかしループ線による上下移動のためにスピードが出ず,チューリッヒ・ミラノ間は最近では飛行機にその主役の座を奪われつつありました。2年前からは特急の本数が半減(2時間に1本)になっており,また遅れ常習路線としても知られていました。
この区間に新たに開通したトンネルは基底トンネル(Basement)と呼ばれるもので,上下移動をなくしてまっすぐに両端をつなぐものとなるため,スピードを落とすことなく南北間を移動することができます。スイスが国の威信をかけてやっていたビッグプロジェクトがようやく完成したようです。おそらくこの区間の開通によって(運賃はかなり高くなると思われますが),イタリア・ミラノへの移動の主役は再び鉄道になるものと考えられます。