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後藤啓二・企業コンプライアンス

企業コンプライアンス (文春新書)

企業コンプライアンス (文春新書)

相次ぐ企業不祥事の原因と対策を簡潔にまとめています。


筆者は元警察官僚で,内閣官房内閣参事官も経験し,企業犯罪の摘発や警察不祥事の未然防止対策などにたずさわっていたそうです。そうした経験も踏まえ,本書は,企業コンプライアンスのあり方について,豊富な実例とともに論じています。
本書の第1部は,ここ数年日本を賑わせた企業不祥事の具体例がたくさんでてきます。単に経緯を紹介するだけでなく,なぜそうした不祥事が起きたのか,その構造的な問題にも注目しています。
本書の第2部では,企業不祥事を防止するにはどうすればよいかを論じています。まず企業不祥事をいくつかのタイプに分類し,最近の企業不祥事多発の原因をリスクの多様化と企業不祥事に厳しくなった社会状況とに求めます。その上で,新会社法で求められる内部統制システムの問題や,コンプライアンス体制整備の問題が詳しく扱われます。最後に危機管理がとりあげられ,情報がトップにきちんと伝わるしくみ,あるいは情報を隠さないことの重要性が指摘されます。
特に目を引くのが,報道における発表の仕方の失敗を回避する方法です。筆者は「事実の正確な公表」をすること,「内部調査に自信を持ちすぎない」こと,「情報の小出しは最悪」であることを指摘します(本書・183頁)。さらに失敗した会見例までついています。企業不祥事は起きない方がよいのは当然ですが,起きてしまった場合の対応方法で社会的な信頼の失墜の程度が大きく左右されることを改めて感じさせます。