- 作者: 落合博実
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
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筆者は国税庁記者クラブにも所属したことがある元新聞記者(現在はフリーランス),その経験を生かして,国税庁の活動の実態を具体的に描いています。
本書はまず,金丸信事件の経緯から始まります。この事件の解明にあたり,国税と検察がどのように動いたのかがとてもよく分かります。さらに本書は,税務調査に対する政治家の介入の問題,政治資金と課税の問題,国税と検察の関係の変化,マスコミ・宗教団体と国税との関係などを取り上げていきます。取るべきところからの税収をいかに確保するか,逆に徴税における公正・平等をどう担保するかという問題を考えさせる素材に富んでいます。
個人的に興味深かったのが,税務調査の実態に関する記述です(本書第5章)。税務調査は行政法総論では行政調査の典型例として取り上げられ,手続的権利の保障(とりわけ刑事手続とのバランス)が好んで論じられています。本書の記述内容を読んでいると,やはり現在の判例の理解の水準では現実問題に対応しきれていないのではないかという気がしました。