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碓井光明・公的資金助成法精義

公的資金助成法精義

公的資金助成法精義

補助金・融資に関する法律問題を包括的・具体的に論じています。


財政法の権威である著者の最新著作は,問題の重要性が認識されながらもこれまで包括的な体系書が出ていなかった,補助金・融資に関する問題を取り扱ったものです。前著『公共契約法精義』と同じく豊富な具体例・裁判例が含まれており,この分野の問題を扱う上での必読文献と言えます。
本書の特色をまとめると次の3点あります。第1は,とりわけ住民訴訟を中心とする,補助金・融資・第三セクターに関する裁判例を丁寧に分析していることです。最近出た重要な最高裁判決までフォローしてあり(例:本書・132頁以下),住民訴訟の一般理論を勉強する上でも有用だと思います。第2は,最近話題となっている具体的なトピックがたくさん出てくることです。注目したものを列挙してみますと,

  • 補助金通則的ルールの条例化(43頁)
  • 地方自治法232条の2の「公益上必要がある」の要件(104頁)
  • 租税滞納対策としての資金助成拒否(155頁)
  • 補助金の包括化・メニュー化(374頁)
  • 学術研究奨励金(438頁)
  • 耐震偽装問題と補助金(481頁)
  • 地産地消(514頁)

といったものがあります。第3は,行政法の一般理論との関係を意識した詳しい記述です。補助金の交付をめぐる手続問題や,交付決定の行政処分性の問題,あるいは不服を争う方法など,一般理論との接点にあたる内容の記述が大変詳しくなっています。例えば補助金交付決定の行政処分性や補助金と根拠規範の論点を,行政法の基本書を読んでも理解しにくかったと感じた場合には,本書の該当箇所を読むことを強く勧めたいと思います。