- 作者: 成田龍一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/04/20
- メディア: 新書
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本書はまず日比谷焼き討ち事件からスタートします。大正デモクラシーと題された本書がなぜそこから話を始めるかというと,日比谷焼き討ち事件は「国民」の名の下に遂行されたからです(本書・9頁)。帝国主義とナショナリズム,そしてデモクラシーが相互に関連しあいながら形成されていく過程を,本書は丁寧に描いていきます。その舞台は帝国議会であったり,植民地であったり,あるいは都市空間であったりします。大正デモクラシーと呼ばれる期間に大衆社会が生成され,そこにいくつかの思想が登場しています。代表的なのは民本主義・マルクス主義・国粋主義の3つで,この鼎立関係が1920年代後半の日本の潮流でした。
これに対し,1931年の満州事変によって,思想対立の状況は大きく変わり,挙国的な流れが強くなってきたと本書は述べています。これは,戦前の日本史における満州事変のインパクトを改めて感じさせると共に,多様な思想を社会が保持することの重要性をも痛感させます。