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石野雄一・ざっくり分かるファイナンス

ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 (光文社新書)

ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 (光文社新書)

ファイナンスの基本的考え方が分かります。


会計に対する関心が近時高まっているのに対し,財務(ファイナンス)については会計との違いが分かりにくく,あまり知られていない状態にあります。本書はそのファイナンスの基本的な考え方を,なるべく難しい数式を使わずに説明しています。
本書の第1章はその名も「会計とファイナンスはどう違う?」と題して両者の違いを説明しており,ここだけでもかなり読む価値があります。一言で言うと,会計は利益を扱うのに対し,ファイナンスは現金(キャッシュ)を扱うところに違いがあると著者は説明します(本書・14頁)。この章では会計の基本的な考え方も説明されており,その上でファイナンスの重要性が印象的に語られます。
第2章では,ファイナンスとは何かが説明されます。ファイナンスとは企業価値の最大化を目的に,投資の決定・資金調達の決定・配当政策の決定の3つをあつかうものだとされます(本書・66頁)。第3章ではお金の時間価値の説明がされ,リスクとリターンの関係が具体的な数字を交えて扱われます。第4章では,企業価値を高める方法として,例えば運転資金のマネジメントの重要性が説かれます。第5章では投資の判断基準としていくつかの方法が紹介されます。主として扱われているのはNPV(正味現在価値)法であり,投資対象のプロジェクトが将来生み出すキャッシュフローの現在価値から必要な投資額の現在価値を引き算したものが正になるかどうかで判断されます。話がやや込み入ってきますが,具体例を思い浮かべるとなんとかついていけます。最後の第6章は経営者による資金調達の方法が採り上げられ,例えば負債の節税効果を収益性の高い企業はもっと生かすべきであるといった提言がなされています。