中心市街地の成功方程式―新しい公共の視点で考える“まちづくり”
- 作者: 細野助博
- 出版社/メーカー: 時事通信出版局
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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中心市街地活性化やコンパクトシティをめぐる論文・著書はここ最近いくつか出ていますが,本書の特色は,中心市街地活性化法が議論の中心になっていること,具体的に5つの処方箋を示して中心市街地活性化の方策を探っていることにあります。
第1の特色についてですが,中心市街地をめぐる法律学からのアプローチはどちらかというと大店法・大店立地法の系統と,都市計画法による立地規制が中心で,中心市街地活性化法の法的しくみとその問題点についてはあまり議論がされなかったように感じられます。これに対し本書は,政策系が専門である著者が,中心市街地活性化法(旧法)の問題点を鋭く指摘している点が注目されます(本書・54頁以下)。すなわち,活性化基本計画の策定が補助金狙いのためだけになされ,補助金は投入されても全く効果が出ていない実態が浮き彫りにされています。
第2の特色は,まちづくりの成功方程式として次の5つを掲げていることです(本書・123頁以下)
- 「オンリーワン」を主張すること
- 選択と集中でパワーアップ
- まちづくりは人づくりを徹底する
- 連携する組織を持とう
- 商圏内の情報ポテンシャルを上げる
他のまちにはないオリジナリティを出すこと,しかもその際には人材の育成と人と人とをつなぐネットワークが鍵になることを,本書は繰り返し主張しています。そのためにまちづくりを協議するための機関の工夫をすべきであるとの制度設計提案がなされています。
従来の中心市街地活性化論とは違う視点から具体例をさまざまに織り交ぜて処方箋を説く本書は,中心市街地活性化の方策を考える上での多くの手がかりを与えているように思いました。