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Konstanz als Heimatstadt

中尾武彦・アメリカの経済政策

アメリカの経済政策―強さは持続できるのか (中公新書)

アメリカの経済政策―強さは持続できるのか (中公新書)

アメリカの景気拡大の背景と危うさについて論じています。


日本が「失われた10年」と呼ばれる経済不況に苦しんでいたのと対照的に,同時期のアメリカはグローバル経済のメリットを最大限享受し,大幅な経済成長を遂げたとされます。本書はそのアメリカの経済政策を分析するとともに,その危うい面や問題点も指摘しています。
著者の分析によると,アメリカの経済発展の要因は,グローバル化の過程においてアメリカがもともと得意としていた金融・IT・高等教育・文化産業などへの需要が高まり,その価値上昇と生産増大をまねいたことにあるとします(本書・15頁)。2006年までの10年でアメリカ経済と日本経済とは大きく水が空けられたように見えます。ドル建てで見た一人当たりのGDPアメリカに対して相対的に39%低下しているからです。しかしその要因は物価上昇率と通貨価値に大きく影響されており,実質生産上昇格差は実は9%しかないことも併せて指摘しています(本書・11頁)。
アメリカの経済成長は同時にアメリカ社会における格差を生み出してもいます。Richistanという金持ち公国ができあがっているとの指摘もなされています(本書・50頁以下)。それは医療保険制度や志願兵の問題などに歪みをもたらしています(本書・63頁)。こうした問題とは別に,アメリカの家計が借金をしてでも投資をする傾向を示していることに著者は警鐘を鳴らしています。サブプライム問題を起点とする最近のアメリカ経済の混乱ぶりの背景がわかる内容にもなっています。