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Konstanz als Heimatstadt

政権交代

【ベルリン=木村正人】ドイツ総選挙で,キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)の中道右派勢力が国民から支持されたのは,ドイツを経済危機から脱却させるための思い切った経済政策を推し進めることへの期待に加え,環境対策や対露エネルギー外交の面から,原発推進政策が評価されたことが大きい。しかし,新政権が最優先で取り組む経済再建は,経済危機の“後遺症”が重くのしかかっていることもあり,容易なことではない。
2005年秋,同盟と社会民主党SPD)との苦渋の選択の末に生まれた大連立政権は,確かに昨年来の経済危機に効果的に対処した。しかし,大連立が今後4年間続いた場合,同盟は社民党との政策調整に手間取って思い切った経済政策を打てず,世界的な景気回復の波に乗り遅れる可能性があった。節度ある経済自由化を唱えた中道右派勢力が支持されたのは「経済危機という場面で保守勢力の方が優れた能力を発揮すると国民が考えている」(ドイツ誌シュピーゲル)ことの証左といえる。
原発推進政策も評価された。風力・太陽光エネルギーの分野に力を入れ,“環境王国”を自任するするドイツは,欧州で温室効果ガス削減の先頭に立つ。地球温暖化防止に一定の役割を果たす原発(計17基)の維持は,同盟と自民党が一環して唱えてきた公約だった。
強圧的な資源外交を進めるロシアは06年と今年1月,ウクライナへの天然ガス供給を止めた。ドイツもその影響を受けており「ロシアにできるだけ依存しないことはドイツの至上課題」(ドイツ紙ウェルト)でもある。
4年の首相在任中,“師”と仰いだコール元独首相から「強過ぎず,早過ぎず,しなやかに,ただ,少しだけポピュリスト的であるようにと学んだ」(米紙ニューヨーク・タイムズ)というメルケル首相の鮮やかな指導力も見逃せない。首相の人気は絶大で,世論調査機関の1977年の調査以来,過去最高の支持率を誇っている。
一方,社民党は,欧州で社民勢力が退潮の一途をたどっている中で,弱者にも痛みを強いる改革を断行した。ドイツ外交問題評議会のある研究員は「社民党は“魂のありか”を探す必要がある」と語る。
ドイツで,「便利な結婚に伴う足かせ」とまで皮肉られた大連立を解消した同盟は今後,自民党とさまざまな課題に取り組むことになる。一つは所得税法人税の減税だ。国内消費を促し,景気を活発化させる狙いがある。ただ,一連の経済危機対策で,ドイツの政府債務残高は国内総生産GDP)の73・4%に当たる1兆6180億ユーロ(210兆5300億円)に膨れ上がり,減税策を実施できるのは早くても1年後となる。
金融危機で世界中の需要が落ち込み,輸出産業への依存度が高いドイツ経済は大打撃を受け,失業率は昨年8月の7・6%(319万人)から,先月には8・3%(347万人)に上昇した。大連立政権は,企業が実施した時短による労働者の減収分への補助をし,失業者の急増を抑えた。だが,時短労働者は140万人も存在する。現在の景気対策が終われば,失業者が急増し,来年末には500万人に達する恐れもある。
雇用政策では,自民党は企業の立場に立ち,雇用・解雇を容易にできる政策を実現したい意向だ。これに対し,同盟は慎重な姿勢をとっており,調整は難航しそうだ。同盟はまた,大連立政権のパートナーだった社民党と,今度は“最強野党”として渡り合うことにもなる。

産経新聞の今日付記事からです。


日曜日に行われた連邦議会選挙では,直近の予想を覆して,CDU/CSUとFDPの保守系政権が誕生することになりました。選挙の年と言われる今年に入ってからも,この3党は比較的堅調な支持を固めていました。しかし直前のいくつかの州議会選挙ではSPDや左派が盛り返しており,また党首のテレビ討論でSPDのシュタインマイヤー外相の人気が高まったこともあって,今後も大連立が続くのではないかとの見方が出ていました。
日本では第1党と第2党の大連立は民主主義に反するといった見方がよく見られますが,ドイツではそのような見方はほとんどないようです。少なくともこれまで続いていた大連立について国民の評価は相対的に高いようです。CDU/CSUSPDには他党よりも人材が多いといったこともその要素になっているようです。
政権交代によってドイツの進む方向がどのように変わっていくのか注目したいと思います。