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Konstanz als Heimatstadt

大内雅博・時刻表に見るスイスの鉄道

スイスの鉄道の特色をコンパクトかつ説得的に紹介しています。


スイスの鉄道は便利で正確──というのがスイスの鉄道に対する一般的な評価です。その便利さはどこから来るのかを詳しく解説しているのがこの本です。
スイスの電車のスピードは実は遅く,高速新線もごく一部(チューリッヒ・ベルン間)だけにしか存在していません。にもかかわらず鉄道による移動はドイツ国内よりも便利に感じます。その理由として本書は次のような要素を挙げています(本書・40頁以下)。

  • 最大30分,もしくは60分待てば次の列車が来る
  • ハブとなる駅に列車を集め,ほぼ同時刻に出発させるダイヤを組むことで,乗り換えの待ち時間を最小にしている
  • ラッシュ時には増発でなく増結で対応
  • バスと鉄道の役割分担を徹底している

日本の公共交通機関と比較すればドイツはまだ接続に気を遣っていると言えますが,スイスはそれがさらに徹底しています。とりあえずある列車に乗れば目的地まで乗り換えであまり待たされる心配がない,という安心感が,スイスの鉄道は便利という評価に繋がっているように思います。
本書の後半では具体的な路線を取り上げて,どのようなダイヤ上の工夫が見られるかを詳しく説明しています。何度か利用したことがある路線でそのような細かな仕掛けがされていたのかと感心させられます。また鉄道料金のことも取り上げられています。スイスの鉄道料金は日本の特急料金込みの値段にほぼ匹敵するという指摘(逆にスイスには特急料金はありません)はなるほどと思いました。半額カードのために政府から補助金が出ていると見うるという本書の見方(本書・140頁)に従うなら,買い物以外にスイスで税金を払っていないドイツ側の利用者は一種のフリーライドなのかとも思いました。