- 作者: 大田弘子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/05/25
- メディア: 単行本
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前著『経済財政諮問会議の戦い』では同会議の政策決定プロセスを評価し,小泉内閣後も後戻りすることはないとの見通しを著者は提示していました。しかし実際には,小泉内閣後の同会議は次第に力を失い,政権交代に伴って民主党は会議の活動を停止させています。
本書は,著者が経済財政担当大臣に就任した経験,経済財政諮問会議の終焉の記録,今後の日本の経済政策の3つの部分から構成されています。読み物として最も興味深いのは大臣就任経験の部分(本書・2頁以下)でした。トップに立つことの重圧や仕事の仕方の違いが描かれています。本書においても著者は同会議がもたらした政策決定過程の透明化を評価し,同時に,諮問会議批判に対する反批判も試みています。具体的な政策決定過程の記録の中で特に目を惹いたのが,公務員改革への抵抗(本書・38頁以下)でした。経済財政諮問会議の力が弱くなっていった要因はいくつもありますが,一番大きな要素は2007年の参議院選挙後のねじれ国会のもとで,内閣と自民党が一元となって野党(参議院)に対抗するという図式のもとで,諮問会議の存在意義が小さくなってきたことにあるようです(本書・60頁)。
本書は,日本経済が今後も成長するための戦略を説いて締め括られています。また,政策決定過程を透明化することで族議員・官僚による密室の決定が排除できることのメリットを改めて強調し,民主党政権のもとでもこうした決定過程の透明化が図られるべきとします(本書・253頁)。政治主導のキャッチフレーズのもとで,議事録公開などの地道な透明化路線の重要性があまり意識されなくなってきている中,本書の主張は改めて傾聴すべきもののように思われました。