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Konstanz als Heimatstadt

政治構造の変革

ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州で12日,緑の党社会民主党SPD)の連立政権が成立し,緑の党のウィンフリート・クレッチュマン氏(62)が州首相に就任した。同党からの州首相選出は1980年の党創設以来初めて。
福島第一原発事故を受け,原発政策が最大のテーマとなった3月の州議会選挙で,緑の党は得票を前回選挙から倍増させ,第2党へ躍進。第3党のSPDと連立を組んだ。同州ではこれまで半世紀以上にわたり,メルケル首相の政権与党・キリスト教民主同盟が政権を担ってきた。
両党は連立合意文書で「バーデン・ビュルテンベルクを今後のエネルギー供給のモデル州にする」として,州内の古い原発2基の廃炉や2020年までの再生可能エネルギー中心の電力供給をうたった。また,「州民は新しい政治と新しい政治スタイルを選んだ」として,住民投票の積極的な導入などを盛り込んだ。
公共放送ZDFの全国世論調査(6日)では,緑の党の州首相誕生に56%が賛成し,63%が新政権に期待していると答えた。(ベルリン=松井健)

朝日新聞の今日付記事からです。3月末の州議会議員選挙の結果,バーデン=ビュルテンベルク州では政権交代が実現しました。それまで政権を握り続けていた保守系(CDU)に代わって,緑の党SPDの政権が誕生しました。これは保守的な基盤が強いと言われる南部では画期的なことでもありますが,他方で緑の党は特にバーデン地域(フライブルクなど)では支持者が元々多く,コンスタンツ市の市長も緑の党が押さえていました。緑の党は1991年に初めて市長を出していましたが(Maselheim市のBraun市長),州首相を出すのは今回が初めてのことです。
新政権が取り組まなければならない問題は大きく2つあります。1つは原発政策の転換です。同州には古くから存在する原発も多く,これを廃炉にするとともに代替エネルギーを確立すること,場合によっては北部の風力発電地域からの送電網を整備することが必要になります。もう1つは,州都Stuttgart周辺の再開発計画(Stuttgart21)への対応です。鉄道の高速新線を建設し,Stuttgart駅を地下化する構想に対して,緑の党は一貫して反対してきました。反対運動の高揚とも呼応した形での政権交代となっただけに,緑の党としてはこの構想をストップさせたいという思いが強いようです。他方で連立相手のSPDは賛成派であり,両者の妥協の結果,この問題についての住民投票を実現することで合意しています。ただその結果次第ではSPDとの連立がうまくいかなくなる可能性もゼロではありません。
FAZの昨日付記事によると,今回の州首相指名選挙では,本来入るべき票よりも2票多い票が入ったそうで,それはCDUの議員が投じたものだと言われています。これは,CDU内部での現在の政治姿勢に対する批判票ともとれるし,将来的な緑の党とCDUとの連立の布石だとも考えられるとしています。ここ数年,SPDは大きく支持を減らし,その大半が緑の党支持に回っています。現在のドイツの政治状況はCDU/CSUSPD,そして緑の党の3つの勢力がほぼ均衡に近い形になっていると言えます。現在はいくつかの州に見られるだけのCDUと緑の党の連立が近い将来,連邦レベルで実現することになるのかもしれません。