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栗原俊雄・勲章 知られざる素顔

勲章 知られざる素顔 (岩波新書)

勲章 知られざる素顔 (岩波新書)

勲章の知られざる歴史を詳しく探っています。


秋になると受賞者が毎年発表されている文化勲章ですが,勲章は憲法行政法の授業では,法律の根拠なく行われていることがしばしば批判されます。本書はその勲章の歴史や現在のしくみ,勲章をもらった人・もらわなかった人のそれぞれの考え方が興味深く紹介されています。
日本における勲章のはじめは幕末期の「薩摩琉球国勲章」であり,その背景には幕府に対抗して対外的な独自性を強調しようとした薩摩の意向が働いていました。戦前には複数存在していた勲章は戦後見直され,とくに生存者叙勲の停止が大きな社会的影響を与えます。占領期を含めて何度か栄典法案が提出されますが,いずれも成立には至りませんでした。公法学の観点からはこの展開が興味を惹きます(本書・65頁以下)。
本書の後半部分はその後の栄典制度の展開,とくに2002年の制度改革に多くの頁数を割いています。また現在の選抜方法についても説明がなされます。本書の最後の部分には勲章を受けた有名人と受けなかった有名人のそれぞれの考え方やエピソードが紹介されています。この部分を読むと,一方では勲章制度の社会的意義を,他方では何らかの序列を付けることの意味を改めて考えさせられます。