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山田真哉・さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

さおだけ屋でさおだけを買った経験がある人はほとんどいないのに,なぜさおだけ屋は潰れないのか?,ベッドタウンに値段設定の高い高級フランス料理店が存続し続けられるのはなぜか?,割り勘の時にカードでいつも支払ってくれるあの人には何のメリットがあるのか?...,身近な例を出発点に会計学の基礎的な考え方を分かりやすく説明してくれるのがこの本です。

公認会計士でありながら小説も手がける筆者は,会計学の難しい用語を使わずに入門書を書くというコンセプトの下で同書を書き上げました。たしかに会計学の言葉はほとんど登場せず,誰にでもある経験から説き起こすスタイルが一貫してとられています。ときどき登場する数字も難しい計算をさせるものではなく,全体として非常に読みやすい本です。会計学を理解するには数学が得意である必要はなく,むしろ数字に対するセンスを磨くべきだと筆者は主張しています。本書に出てくるさまざまな具体例は,われわれ消費者の日々の消費行動に対してもさまざまな教訓を引き出してくれるように思いました。

わかりやすいという特色を持つ同書は,しかし会計学の先端的な分野を切り落としているわけではありません。むしろそういった難しい(と思われる)内容を,一般の人にもわかりやすい言葉・表現に大胆に言い換えることで,理解を促進しています。こうした技術はプレゼンテーションや授業をする際にも学ばなければならないと感じました。