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横手慎二・日露戦争史

日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)

日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)

日露戦争の終了から今年で100年を迎えます。この本は,日露戦争がなぜ起こったのか,その世界史的な意義はどこにあったのか,戦後の両国にどのような影響を与えたのかを新しい視点で分析したものです。

日露戦争に対しては,黄色人種が白人に勝った初めての戦争であるとか,日本が列強に伍するようになった契機となったといったポジティブな評価と,これに勝利したことによって最終的にアメリカとの無謀な戦争に突入したのだとする考え方とがあります。同書はこの論争への関心よりはむしろ,日露戦争を20世紀型の新しい戦争として再定位することに関心を示しています。また,日露戦争に至るまでの間にロシアの内部ではさまざまな見解の対立があって,表面に出てきた対日・対清政策は統一的に理解すべきではないこと,ロシアが示した個々の対日政策を日本側がその真意とは違って受け止め,それが戦争への道を歩ませたことを詳しく紹介しています。あるいは,日露戦争に勝利するため,日本は欧米列強との関係や清・韓国との関係を事前に周到に調整していたことも目を引きます。

同書のもう一つの興味深い視点は,日露戦争と第二次大戦におけるソ連参戦とを連続的に捉えていることです。同書も指摘するように,日本では一般に両者は別々に考えられており,むしろ第二次世界大戦直前には日本とソ連との関係はそれなりによかったと思われています。しかし,日露戦争第一次大戦における日本のロシア・ソ連に対する軍事的な行動を念頭に置けば,ソ連参戦を第二次日露戦争と考える方が自然なのかもしれません。