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和田秀樹・<疑う力>の習慣術

<疑う力>の習慣術 (PHP新書)

<疑う力>の習慣術 (PHP新書)

疑う力の重要性を説く本です。


和田秀樹さんといえば,受験勉強法の本のシリーズや,最近では大人向けの勉強法の本などで知られます。本書はこうした系統とはやや趣が異なり,現代社会において疑う力が必要となってくることを説く本です。
マスコミが作り出す二分法の図式は,わかりやすい反面で,我々から疑う力を奪っていると本書は主張します。疑う力を持つことで,社会の出来事に対する判断力を高めたり,自らの仕事のなかでのチャンスを拡大することができるとします。本書の中で気になった部分を抜き書きしてみます。

そもそも,オリジナリティというのは,突発的な空想を指しているわけではない。常識に近いところで,常識から少し出たところを思いつく人がオリジナリティの高い人と言われるのだ。(155頁)

常識とは正反対を疑うのではなく,その周辺を疑うべきだとの主張は,僕も常々感じているところです。

極端な言い方かもしれないが,私は,少なくとも日本で現在通用している心理学はほとんどあてにならないとさえ思っている。...(中略)... しかも,心理学の理論のほとんどは,アメリカやドイツで実験された結果であって,それが日本人に当てはまるという保証はどこにもないのだ。(168頁)

心理学やその(若干不正確な)応用形態であるいわゆる「心理テスト」は広く人口に膾炙していますが,なんとなくうさんくさいと思える部分もありました。上記のように書かれると,やっぱりと思う反面,若干ショックでもあります…。

本筋に戻りますと,疑う力を身につけるためには,本書が指摘する発想法の問題の他に,情報を幅広く集めることが大事だと思います。一つの出典だけに頼っては,コントロールにはまってしまう可能性が高いからです。ぶつかり合うさまざまな諸情報の中で迷いながら自らの判断を下す作業を繰り返すことが,疑う能力を高めることになると思います。そしてそうした作業こそ,学部教育でもっとも重要な要素だと考えます。