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西鉄宮地岳線部分廃止へ

西日本鉄道(株)では,本日当社が運営する西鉄宮地岳線貝塚〜津屋崎間)の一部区間である,西鉄新宮〜津屋崎間(9.9km)を廃止する方針を決定いたしましたので,お知らせいたします。
宮地岳線は,福岡市東区貝塚福津市津屋崎を起終点とし,福岡市の副都心・香椎地区や新宮町,古賀市を経由する全長20.8kmの鉄道路線です。貝塚駅では福岡市営地下鉄箱崎線と接続しており,主に福岡市都心部と周辺市町とを結ぶ交通機関としての役割を担ってまいりました。
しかしながら,モータリゼーションの進展,少子化の影響,経済情勢の変化などにより,宮地岳線貝塚〜津屋崎間)の輸送人員は減少を続け,平成16年度は7,212千人と,ピーク時の59.1%にまで落ち込んでおります。
こうした経営環境の中,ワンマン運転化や駅業務の外部委託化,保守部門の効率化等の経営効率化策,沿線の観光名所を巡るハイキングの実施などの需要喚起策,利便性確保のための運行本数維持など,経営努力を続けてまいりましたが,利用者は減少の一途を辿り,収支改善には至っておりません。
収支状況につきましては,全線の営業収益が,年間約11億円であるのに対し,毎年5〜6億円の経常赤字を出しており,最近10年間の累積赤字額は約60億円に達しております。
ことに,西鉄新宮〜津屋崎間は,JR鹿児島本線国道495号線(旧国道3号線)とほぼ並行していることから,平成16年度の輸送人員はピーク時の53.1%と著しい減少を続けております。また,1車両あたりの平均乗車人員が7名と,鉄道の特性である大量輸送機関としての存在意義を失っている状況となっております。
このようなことから,平成17年6月には福津市古賀市・新宮町・福岡県・九州運輸局西鉄で構成する「西鉄宮地岳線活性化等検討会」を設立し,同検討会で決定した12項目の利用促進策を約半年間にわたり,沿線自治体が中心となって取り組んでまいりました。しかし,利用促進策の開始後も輸送人員は減少を続け,経営改善に至りませんでした。
これらの状況を総合的に判断し,また福岡県および沿線自治体の意向を考慮した上で,一部区間の廃止を決定いたしました。
なお,明日3月31日,鉄道事業廃止届出書を九州運輸局に提出することとしております。

西鉄のプレスリリース(3/30付)からです。宮地岳線の北部を廃止する案は昨年から出ていたようですが,ついに先日,部分廃止が正式に表明されました。


宮地岳線の車両
日本最大のバス会社である西日本鉄道はしかし,天神大牟田線を中核とする福岡県南部向けの路線と,福岡市東区貝塚を起点に福津市津屋崎までを結ぶ宮地岳線の大きく2つの鉄道路線を持っています。しかし利用者が多い天神大牟田線とはちがい,宮地岳線は2両連結での運転が原則(3両連結の場合もあり)のローカル線の風情がつよい路線です。貝塚から西鉄香椎までは駅間が短めで,そのため速度もあまり出しません。西鉄香椎を過ぎると次第に駅間が長くなり,その車両でそんなスピードを出しても大丈夫かなと思うほどのスピードを出す区間が増えてきます*1。沿線の香椎花園は小さい頃の遠足などでよく使われる遊園地,また終点の津屋崎は夏場の海水浴に適する津屋崎海岸まですぐ近くのところにあります。
宮地岳線はもとは現在のJR香椎線とともに博多湾鉄道汽船という会社が運行していました。そのため両者の接続駅である和白駅はかつては線路が分離していませんでした。その後香椎線にあたる路線は国鉄となり,残された宮地岳線のうち千鳥橋(当時は新博多)〜貝塚間は福岡市内線(路面電車)が乗り入れるようになりました。ところが,地下鉄の建設の際にこの路面電車乗り入れ区間が廃止され,地下鉄が貝塚まで接続するまで宮地岳線は,都心部へのアクセスが絶たれた路線となってしまいます。地下鉄延伸後も筑肥線のような相互乗り入れではなく,貝塚駅での乗り換えにとどまっています。香椎人工島へのアクセスルートとして宮地岳線を利用し,その際に相互乗り入れを実現しようという構想が何度となく語られていますが,宮地岳線の赤字体質もあって話はスムーズに進んでいません。
当初,廃止区間三苫以北とされていましたが,住宅地建設が見込まれる西鉄新宮までは存続することになりました。現在はJR鹿児島線福間から福岡寄りで仮に不通になっても代替手段としてこの宮地岳線を利用することができていましたが(とはいえ西鉄福間・西鉄古賀とJRの福間・古賀駅とはそれなりに距離があります),今後はそのような使い方は香椎から先のごく短い区間でしかできなくなります。

*1:同じような感想はすでに廃止された西鉄北九州本線の黒崎→折尾間でも抱いていました。