- 作者: 山岡淳一郎
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2006/03/23
- メディア: 単行本
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昨年から日本を震撼させている偽装建築物問題は,日本の建築・都市法制をめぐる根深い病理のひとつの現れに過ぎません。本書は,いわゆる姉歯問題についてはほとんど言及していませんが,にもかかわらずそれと同質の構造が浮かび上がってくるところに,この問題の深刻さが現れているように思います。
本書が取り上げているのは,旧住都公団の欠陥マンション,マンション建替えとそれに異議を唱えることの難しさ,公団によるニュータウン開発,国立マンション事件,豊田市のブラジル人コミュニティの5つの事例です。とくに欠陥マンション問題についてかなりの頁数が割かれています。欠陥マンション問題では,修補にむけた住民合意形成の難しさが描かれています。そこでキーポイントになっているのは,マンションの欠陥が世間に知れることによる資産価値の低落を防ぐために箝口令が敷かれていることです。次のマンション建替えの問題では逆に,追い出されそうになっている側からこの問題を描いています。共同所有をめぐる法制度はどう設計されるべきかという難しい課題がつきつけられていることが痛いほどわかります。
建築法・都市法のみならず,日本社会の今後のあり方を考える上でも,危機感と示唆とを与えてくれる作品です。