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Konstanz als Heimatstadt

岩坂泰信・黄砂 その謎を追う

黄砂―その謎を追う

黄砂―その謎を追う

黄砂は迷惑でもあり,地球の環境維持システムの一部を構成するものでもあるようです。


黄砂といえば,春の風物詩ですが,最近は愛でる気持ちにならないくらいにひどいものが多くなってきました。かつては山登りでもしないと確認できなかったことが多かったのに,最近では明らかに黄砂と分かる,しかもかなり視野が悪くなるものが増えてきているような気がします。
本書はその黄砂を多角的な角度から検討・紹介しています。日本よりも黄砂の発生源に近い中国・韓国では,黄砂は人間や農業・畜産業により直接的に被害をもたらすものとして扱われているとか,黄砂は大気中を浮遊している間に汚染物質を取り込んで化学反応を引き起こしているといった,あまり知られていない情報が次々と出てきます。黄砂はアスベストと類似した健康被害を起こしうるというショッキングな話(本書・47頁)もあれば,黄砂には酸性雨を中和する作用がある(本書・122-123頁)あるいは黄砂が海のプランクトンによって食べられ,プランクトンの活動を活性化させている(本書・190頁)という,地球環境システムの壮大さを感じずにはいられない話もあります。黄砂がひどいときにはやはり外出は控えた方がよさそうですが,黄砂がないと地球環境システムが維持できないこともまた確かなようです。