- 作者: アルマン・マリールロワ,上野直人,Armand Marie Leroi,築地誠子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2006/06
- メディア: 単行本
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古代からのいわゆる「怪物」伝説を素材に,それらが実は遺伝子が原因の変異であったことを遺伝学の立場から説明するのが本書のコンセプトです。本書の中にはいわゆる遺伝病がなぜおこるのか,そのメカニズムが詳しく紹介されるとともに,その(やや衝撃的な)写真やイラストも掲載されています。
本書を読んだ感想は次の2点です。1つは,遺伝子が原因の変異はいとも簡単に起こること,逆に言えば,重篤な遺伝病を避けることは通常考えられているよりも困難なことです。筆者の主張はむしろ,我々はみな変異なのであり,その程度に差異があるだけであると述べるところにあり,大きく共感しました。もう1つは,(この筆者の主張とも関わりますが),我々が通常ヒトの姿だと思っている容姿あるいは「美」とは一体何なのだろうかと再考せざるを得ないことです。この点は本書の最後で著者も頁数を割いて問題提起をしています。個性尊重といいながら,他方で一定の容姿あるいは美を我々は前提にしすぎているのではないか,そう感じさせる作品でした。