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Konstanz als Heimatstadt

園田英弘・忘年会

忘年会 (文春新書)

忘年会 (文春新書)

忘年会の研究という異色の本です。


まもなく忘年会が本格化する時期になります。忘年会とは一体いつ始まって,どのように普及していったのか,その謎をさまざまな史料をつかって研究しているのが本書です。
本書によると,最も古い忘年会の記録は,室町時代前半(1430年)だそうです(本書・18頁)。連歌能楽などの新しい芸能が花開いたこの時期に「年忘れ」とされる連歌の納会が行われていたとのことです。江戸時代にはいると武士階級が御用納めとされた12月25日以後に大宴会を開くようになり,明治時代にはヨーロッパスタイルの「演説」を中心とするパーティー形式の忘年会が入ってきたとのことです。戦前は大都市の俸給生活者を中心に忘年会が拡大し,ボーナスをあてこんだ会が開かれていました。戦争で一旦中断した忘年会は戦後になって大衆化の道を歩みます。
このような忘年会の歴史をたどってみると,我が国でクリスマスが定着した一因はもしかすると忘年会の慣習だったのではないかという気がしてきます。従前からあった祭事とクリスマスが重なって定着したヨーロッパと同様,我が国でも忘年会という慣習がなければ,クリスマスをこれだけ祝うことにはならなかったのかもしれません。