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Konstanz als Heimatstadt

岡本哲志・銀座四百年

銀座四百年 都市空間の歴史 (講談社選書メチエ)

銀座四百年 都市空間の歴史 (講談社選書メチエ)

歴史という視点から,銀座のまちづくりの特色と課題を明らかにしています。


最近は少し慣れてきましたが,東京で街を歩く機会が少なかった頃は,銀座と早稲田で必ずといっていいほど道に迷っていました。現在でも銀座を歩くときには,地図をかなりよく見ないと危険です。おそらくそれは,どの交差点をとってもこれといって高い建物があるわけではない,逆に言えば整然とした街並みが維持されているからでしょう。
本書は,その「銀座」の街並みがどのようにして生まれ,発展し,現在に至っているのかを,江戸時代に遡って解き明かしています。もともと江戸時代に比較的小規模の区画の区切りがなされ,それが明治・大正・昭和と維持されたところに,町人の街として出発した銀座の,他の都心部との違いがあると筆者は指摘しています。もちろんいくつかのデパートのように,ブロックすべてが同じ建物になっている部分もありますが,銀座ではそれは少数派に属します。
建物の巨大化・超高層化は,まちなみの空間としての質を低下させると筆者は考えているようです。建物を建てる敷地が巨大化することが避けられた銀座は,現在まで(一部の例外を除くと)超高層・超巨大ビルによって景観の激変を来していません。戦後の銀座は高さ制限を厳しくかけたり,あるいは最近では「銀座ルール」と呼ばれる地区計画によって商業地としての景観を維持しようとしていますが,そのベースには,町人の街としての小規模敷地という要素があったことを強調する筆者の視点は,大変興味深いものでした。