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Konstanz als Heimatstadt

東京大学教養学部編・高校生のための東大授業ライブ

高校生のための東大授業ライブ

高校生のための東大授業ライブ

学問の広がりと深さとを分かりやすく教えてくれる作品です。


東京大学教養学部が高校生向けに開催している公開講座の内容を本にした本書は,全部で15講で校正された,学問の案内書としての色彩を持ちます。
扱われている内容は文系・理系の双方に渡り,高校生にも興味を惹くテーマからスタートしながら,それぞれの学問分野のかなり先端的な話までが扱われています。個人的におもしろいと思ったのは,ハイデガーの哲学を本当に分かりやすい言葉で説いている第4講「『今ここにいる自分』の謎を解く」(北川東子先生),地球における生命の絶滅の謎を扱っている第5講「地球は『やさしい惑星』か」(安富歩先生),日本の物理学を代表する二人の科学者の足跡と交流を追った第11講「朝永振一郎湯川秀樹」(岡本拓司先生),乳酸=疲労原因という通念を打ち破る第14講「エネルギー源としての乳酸」(八田秀雄先生)でした。
定価1800円という(この手の本としては)かなりの低価格にもかかわらず,フルカラー印刷がなされ,分かりにくい言葉には各ページの下に説明が付いています。また各講の最後には,講義後の質疑と,関連する文献が挙げられています。これから教養課程が始まる人にとっても,また同じことばかりの勉強で煮詰まっている人にも向くテキストだと思います。