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Konstanz als Heimatstadt

酒井聡樹・これからレポート・卒論を書く若者のために

これからレポート・卒論を書く若者のために

これからレポート・卒論を書く若者のために

レポートの構成の仕方や文章の書き方をさまざまな具体例を織り交ぜて丁寧に説明しています。


本書はそのタイトルの通り,これからレポート・卒論を書こうとする人を対象にした本であり,またそれを指導する(我々)教員の指南書としても使えるものとなっています。
第1部は「レポート・卒論を書く前に」というタイトルで,レポート・卒論が他の文章とどの点において異なるか,なぜレポート・卒論を書くのかなどが説明されています。続く第2部では「レポート・卒論の書き方」と題されて,テーマを決める→検索・実験・調査→構成・構想を考える→タイトルの付け方→序論の書き方・研究方法の説明・結果の説明→図表の提示→考察の進め方→引用の仕方→結論・要旨の書き方の順に,具体的なヒントが書かれています。第3部「日本語の文章技術」は,文章をわかりやすくするためのアドバイスが中心であり,この部分はレポート・卒論のみならず,より普遍的な「文章力」を高めることをも目的としています。
本書の随所には,常々思っていることが見事に言語化されている箇所,あるいははっとさせられる指摘が見られます。例えば,

しかし現実の世の中では,読んでも分からないのは書き手の責任である。読者は,意味不明な文章の海の中から真珠を探しだそうなどとはしてくれない。(本書・20頁)

あるいは

レポート・卒論を書くと言うことは,自分の主張を小さくしていく作業である(大きくする努力は,研究の構想を練ったり,事実・データを解析したりする段階にすべきことだ)。小さくし過ぎはしないかと思う方もいるかもしれないが,まずその心配はない。できるだけ頭を冷やして,言い過ぎのないレポート・卒論にするようにしよう。頭を冷やすには,初稿を書いてからしばらくレポート・卒論を寝かす(その原稿のことはきれいさっぱり忘れる)ことが有効である。しばらくぶりに見るあなたの原稿は,どうしてこんなことが言えるのだという恥ずかしさにあふれているだろう。それでいいのだ。レポート・卒論の正しい評価があなたにも見えてきたということである。(本書・135-136頁)

などです。レポート・卒論を書くのが初めてという人だけではなく,すでに何度か経験している人にとっても,本書はさまざまな示唆を与えてくれるものと思います。