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Konstanz als Heimatstadt

谷口克宏・信長と消えた家臣たち

信長と消えた家臣たち―失脚・粛清・謀反 (中公新書)

信長と消えた家臣たち―失脚・粛清・謀反 (中公新書)

信長によって失脚させられ,粛正された家臣たちの物語です。


織田信長に関係する著作・小説はたくさんありますが,信長によって失脚・粛正された家臣たちをまとめてとりあげた作品は初めて見ました。
本書は大きく3つからなり,第一部の「挫折」では,討死ないし抜擢に答えられずに失脚した家臣たちが取り上げられます。とくに越前の一向一揆がどのようにして力を持つに至ったかについてはこれまで不勉強だったので,本書の説明がよく分かりました。
第二部の「粛正」は信長が従わせた家臣らを粛正・追放した例を集めています。よく知られている天正8年の佐久間信盛らの追放だけではなく,寝返りによって織田方についた国人をしばしば粛正していることがよく分かります。ここに,信長の晩年にいたるまで各地で謀反が絶えなかった一因がありそうです。
第三部の「謀反」はその謀反についてを取り上げています。第10章「水野信元と松平信康切腹」では,筆者が独自の見解を示しています。それによれば,信康が切腹に追い込まれたのは,当時家康がいた浜松城の家臣団と信康がいた岡崎城の家臣団との対立が原因であろうとの見方をしています。まだ第12章「反逆による信長の最期」では,明智光秀の謀反について,秀吉と比べ光秀が高齢であったことが,光秀の行動につながったのではないかと推測しています。
本書全体を読んでみると,信長による天下統一は,仮に本能寺の変がなくても無理だったのではないかという気がしてきました。敵方からの寝返りによって従った層をどうやってコントロールするかという点につき,信長のやり方はあまりに稚拙で,少なくとも乱世を平定の方向に向かわせるという局面ではうまくいかないやり方をしていることが,あらためて印象づけられました。