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Konstanz als Heimatstadt

小島あずさ=眞淳平・海ゴミ

海ゴミ―拡大する地球環境汚染 (中公新書)

海ゴミ―拡大する地球環境汚染 (中公新書)

海洋を漂流するプラスチックごみという問題に注目しています。


先日はじめて東京湾のすぐそばに行く機会がありました。そこで特に目立ったのが空きペットボトルやトレイといったプラスチック製のごみでした。同じ状況は,やはり先日はじめて行く機会があった琵琶湖でも見られました。これまで(ある意味では幸いなことに)地元の海岸ではこうした光景をあまり目にすることがなかったので,海洋ごみの問題を意識したことはありませんでした。
本書はまさにその海洋ごみ,とくに生活から生じているプラスチック製の廃棄物の問題をとりあげています。冒頭のカラー写真では衝撃的な写真がいくつもならんでいます。本書の1〜4章は漂着ごみの実態を様々な角度からとりあげています。北海道・知床や長崎・対馬では海洋ごみの処理の問題が深刻になっています。片付けてもすぐにまたやってくる,処理費用の負担の問題がある...といったことから根本的な対策として陸上ごみの発生抑制が必要だということがわかります。また,漂着ごみは国境を越えてやってくるので,国内的な対策だけでは不十分です。
本書5・6章は海洋ごみ対策として,法的な側面と市民グループの活動を取り上げています。海岸法・港湾法・自然公園法・河川法などが適用できるところではある程度の対策が取れる一方,そうでない場合には廃棄物処理法による対応しかないとされます。医療廃棄物などの例外をのぞくと,そのほとんどは事業系一般廃棄物として扱われるため,市町村が処理費用を負担する枠組に入らず,市町村と事前協議をせずにボランティアが海岸でごみをあつめると,ボランティアがその処理費用を請求されることになる可能性があるとされます。既存の枠組では海ごみへの対策は不十分であり,何らかの新しい法的しくみが求められていると言えそうです。