ernst@hatenablog

Konstanz als Heimatstadt

細野祐二・公認会計士vs特捜検察

公認会計士 VS 特捜検察

公認会計士 VS 特捜検察

日本の刑事手続の問題点が克明に記されています。


著者は公認会計士であり,株式会社キャッツの粉飾決算をめぐって起訴され,1審では有罪,2審で無罪となりました。本書はこの事件の経緯に加え,検察による捜査の実態や刑事訴訟の現実を当事者としての立場で記したものです。
本書の読みどころは,刑事事件の操作や刑事訴訟における問題と,会計処理の問題の2つありますが,前者の方がより興味を惹きました。刑事法で勉強する日本の刑事手続の問題点をそのまま凝縮したような展開がなされています。特に興味を惹いたのは,拘留中の検察官の取り調べのスタイルないし戦略を「雑談」「説得」「論詰」「強要」「恐喝」の5つに分類しているところです(本書・45頁以下)。検察とのやりとりについては佐藤優・国家の罠をはじめいくつかの詳しい本が出ていますが,これらをメモした上で分類したというところにすごさを感じます。著者によるとこれらのパターンは取り調べの時期・昼夜等によって計画的に配列されているそうです(本書・51頁)。
また刑事事件と弁護活動に関する以下の記述(本書・221-223頁)には考えさせられるものがありました。似たようなことはもしかすると行政事件についても言える(言えた..であってほしいのですが)のかもしれません。

考えてもみよ。日本の弁護士は刑事事件で99.9パーセントも負けているのである。いくら有名な弁護士でも,刑事事件で勝った経験などはほとんどないに等しい。そもそも日本には,刑事事件で勝てる弁護士など存在しないではないか。
...(中略)...
私も誤解していたのであるが,弁護士とは被告人の弁護をする人のことを言うのではない。弁護士は,被告人の行う無罪証明を公判の場で司法用語に翻訳する通訳人以上の機能を持たない。刑事事件における弁護士は,公判手続促進のための被告側代理人にすぎないのである。
すべては自分でやる。私以外の誰も,私の無罪を助けてくれる人などいない。