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Konstanz als Heimatstadt

山本紀夫・ジャガイモのきた道

ジャガイモのきた道―文明・飢饉・戦争 (岩波新書)

ジャガイモのきた道―文明・飢饉・戦争 (岩波新書)

ジャガイモの歴史と未来を考える作品です。


ジャガイモの歴史的なエピソードについては『ジャガイモの世界史』がすでに紹介していました。本書もこれとかさなる部分がありますが,本書がより注目しているのは,原産地であるアンデス地方の歴史や文化です。
ジャガイモはトマトやナスと同じナス科の植物だそうです(本書・4頁)。しかし野生種にはソラニンなどの毒が入っていて食べられず,人類は毒抜きをしたり毒のないジャガイモを栽培種として改良することで,食べることができるようにしてきました。アンデス地方の生活の中でこうした過程を経たジャガイモは世界に広がり,飢餓を救ったりそれぞれの地域の文化に溶け込んだ食のメニューを作り出したりしています。
日本では戦時中の影響からかジャガイモへの偏見がまだあるように思われますが,複数ある食べ物の一つとしてジャガイモが正当に評価され,利用されることが必要と本書はしめくくります。食糧危機が次第に問題として認識されつつある現段階において重要な指摘のように思われました。