- 作者: 毛利敏彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/07/01
- メディア: 新書
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明治維新の中心的な役割を果たした薩長土肥の「肥」は佐賀藩を指すことは広く知られています。にもかかわらず佐賀藩が近代化において果たした役割は,他の藩に比べてあまり知られていないように見えます。本書は,佐賀藩主の鍋島閑叟と佐賀藩士江藤新平の二人にスポットを当てて,幕末から維新にかけての近代化に佐賀藩が果たした役割を力説しています。
佐賀藩がなぜ近代化に大きな役割を果たしたのかを明らかにするため,本書はまず「長崎御番」の説明をしています。これは江戸時代の長崎警護を担当した役割のことであり,福岡藩と佐賀藩が交代で担当していました。そのために両藩は西洋の事情について他の藩よりも詳しく知ることができていました。さらにはフェートン号事件の際の長崎御番が佐賀藩であり,佐賀藩はこれによって外圧の強さを以前から感じていたことが,幕末における対外的な防衛力の向上に先鞭を付けたとします。
佐賀藩主の鍋島閑叟と佐賀藩士の江藤新平は,幕末から維新にかけての政治状況の中でどのような役割を果たしたのかを中心に描かれており,これまでとは違った角度からこの時代の歴史を眺めることができます。明治六年政変と佐賀の乱の結果,佐賀藩の役割がこれまで過小評価されてきたことを著者は憂い,正当な評価を求めて様々な要素を次々と出してきているところが本書の読みどころであると思います。