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Konstanz als Heimatstadt

生田長人・都市法入門講義

都市法入門講義

都市法入門講義

改正のたびに複雑化する都市法に高い概観性を与える作品です。


都市法全般を見通す基本書としては既に,安本典夫『都市法概説』(法律文化社・2008年)が出版されています。本書もまた,門外漢からは分かりにくい都市法に高い概観性を与えると同時に,そこに含まれている法的な課題を炙り出すものになっています。
本書は大きく2つに分かれており,前半部分は都市法の全般的な解説,後半部分はトピックごとの法制度の紹介の形式をとっています。前半では,都市計画のしくみを詳細に説明しており,土地利用規制・都市基盤施設整備・地区計画といった内容から,開発許可・建築確認・損失補償といった都市計画の実現に関連する法制度までが取り扱われています。後半部では,まちづくり・景観・都市緑地保全法・都市再生・地方都市活性化・廃棄物・災害のテーマごとに,関連する法制度とその問題点が指摘されています。
本書は一方では,都市法の概説書として,込み入っていて分かりにくい都市計画に関連する法制度を平易に解説しています。類似の法制度の違いが細かく指摘されていて,本書を読んではじめて知った個別法制度の細かな違いも多々ありました。他方で本書は,都市法のあり方に関して批判的な視点を提示しています。都市の成長管理という観点から見た場合に日本の法制度の不十分性は以前から指摘されていました。本書はこのことに改めて警鐘を鳴らすとともに,近時の都市再生政策によって導入された規制緩和,とりわけ高容積率政策が,さまざまな問題を引き起こしていることを印象づけています。これから都市法を勉強する際にも,また都市法の問題点について深く調べる際にも有用な一冊と思います。