ernst@hatenablog

Konstanz als Heimatstadt

ドイツ語教育と国際化

日本とドイツのドイツ語教育の違いは様々な点に見られます。


ドイツで販売されている文法書やテキストなどは(当然ながら)ドイツ語の文法用語を採用しています。日本で使われている用語とほぼ対応しているものがほとんどですが,大きく違うものとして次のようなものがあります。

  • 現在分詞 → Partizip I (eins)
  • 過去分詞 → Partizip II (zwei)
  • 未来形 → Futur I
  • 未来完了形 → Futur II

また,日本では1格・2格・3格・4格と,格を数字で表すのが最近では一般的*1ですが,ドイツでは数字ではなくNominativ, Genitiv,Dativ,Akkusativを使います。さらに変化表の順番も,日本風にいうと1格→4格→3格→2格の順番になっていることが普通です。
こうした文法用語の違いは慣れてしまえばあまり大きな影響はありませんが,より深刻なのはドイツ語の習熟度がヨーロッパ全体でいわば規格化され,それに従ってテキストなどが編纂され,あるいは語学コースが開講されていることです。具体的には次の6つに分けられています。

  • A1:よく知っているテーマについての単純な単語・文章を聞き取ることができる。よく知っているテーマについて単純な構造で意思疎通ができる。いくつかの単語や非常に簡単な文章を読んで理解できる。単純な標準的書式(例えばホテルのチェックイン書類)を書くことができる。
  • A2:単純な日常会話や短いニュースの主要部分について聞き取って理解することができる。日常生活の状況での短く簡単な会話ができる。短い簡単なテキストをよむことができる。短いノートやメモを書くことができる。
  • B1:長く話されていても,会話やニュースの主要部分を聞き取って理解することができる。簡単な構造の文章で経験や出来事を書いたり意見を述べたりできる。日常生活や仕事上のテキストをよんで理解できる。個人的な手紙を書くことができる。
  • B2:標準ドイツ語で話されているたいていのテレビ放送や映画を聞き取って理解することができる。比較的たやすく議論に参加することができ,自分の意見を表明することができる。時事的な問題についての記事や報道を読んで理解できる。論文やレポートなど詳細な文章を書くことができる。
  • C1:会話やラジオ・テレビ放送を比較的たやすく理解することができる。たいていの状況で積極的に表現をすることができる。複雑な説明文や文学的な文章を理解できる。文章的に明確で構造も適切な,複雑な内容を含む文章を書くことができる。
  • C2:話されている内容をたやすく聞き取ることができる。すべての会話や議論にたやすく,正確かつ適切に参加することができる。すべてのタイプの文章をたやすく読んで理解できる。要求度の高い手紙や複雑な報告を書くことができ,場合に応じた適切な表現をすることができる。

日本の独検は1〜4級に分かれますが,必ずしも上記の分け方とは対応関係にありません。日本ではゲーテ・インスティテュートなどで受けられる認定試験でこうした基準が使われていますが,一般の大学教育ではまだそれほど普及していないと思われます。留学する学生を増やしたいという場合には,おそらくこうした標準的な区切り方を参考に大学のカリキュラムを組み直したり,ヨーロッパで比較的普遍的に使われている有力なテキストの内容を踏まえたものに教育内容を変えていくということが,今後必要になるかもしれません。

*1:かつてはドイツ語を翻訳した「主格」「属格」「与格」「対格」の方が使われていたようです。