齋藤 孝・原稿用紙10枚を書く力
- 作者: 齋藤孝
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2007/02/09
- メディア: 文庫
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筆者は『声に出して読みたい日本語』の著者としても知られ,読む力や書く力についての著書を多く出しています。本書は,ある程度まとまった文章を書く力を磨く意義とその具体的な方法を扱っています。
書かれている内容の多くは,日頃自分自身が感じていることを的確に「言語化」してくれていると思うものが多かったです。例えば,
- 書くことによって思考力が鍛えられ,自分なりの視点を持つことができるようになる(本書・51頁)
- 文章を書く力とは考える力のことである(本書・58頁)
- 書くという観点からの読書法は,味わうための読書法とは全く違う(本書・79頁以下)
- 書くことは構築することであり,予め構想をメモしてから書き始めるべきである(本書・101頁以下)
といったものです。
他方,なるほどと思ったものとして次の2つがありました。1つは,文章を書くときは「起承転結」の「転」から考えるべきであるという指摘です(本書・28頁)。たしかに,ある文章の持つメッセージ性ないし面白さ・新奇性とは,「転」の部分に宿っていることが多いと思います。もう1つは,知識と知識をつなぐことこそが面白さであるという主張です(本書・96頁)。
おもしろいとは,それまで頭の中でつながっていなかったものがつながるということでもある。読み手にそういう刺激を与えるラインをつくるのが,文章を書くことの醍醐味の一つでもある。
頭の中の離れた場所に整理されていたこと,つながっていなかったことが,脳の中に電流が流れて,つながっていくような快感である。それが読者にとっての「気づき」の喜びである。それまでつながっていなかったことがつながり,読者に「そうだったのか」という気づきの喜びを与えるのである。
知識を創造するとはどのような営みなのかということを考える上でも,本書の上記の指摘は大変興味深いと思いました。