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Konstanz als Heimatstadt

ドイツの遠距離公共交通

ドイツの遠距離公共交通は鉄道・飛行機です。


ドイツの近距離公共交通についてのエントリを書いてからかなり間が空いてしまいましたが,今度は遠距離公共交通の現状について書きたいと思います。ドイツの遠距離公共交通の中心は鉄道と飛行機です。飛行機については,日本と同じく格安航空会社が安い飛行機を飛ばすようになっています。他方,各地の空港はかならずしも中心地とのアクセスのよいところにあるわけではないことから,鉄道の遠距離公共交通に占める地位はなお高いように思います。そこで,このエントリでは鉄道を利用する遠距離の移動の実情を扱います。

遠距離公共交通の主役DB

コンスタンツ行きのIRE(長距離快速)は早朝・深夜を除いてカールスルーエ→コンスタンツ間を往復している
近距離の公共交通では各地域の交通連合が主要な役割を果たしていました。これに対して遠距離交通に関しては,列車の運行も含めてドイツ鉄道(DB)が担っています*1。DBが担っている列車の種類は次の通りです。

  • ICE: Inter City Express(新幹線*2
  • IC: Inter City(特急)
  • EC: Euro City(国際特急)
  • IRE: Inter Regio Express(長距離快速・特別快速)
  • RE: Regional Express(快速)
  • RB: Regional Bahn(普通)

ICとECは格としてはほぼ同じで,国境を超えて走るかどうかにより呼称が変わります。IREとREは走行距離の違いの他,IREの方がやや停車駅が少ない特色があります。RBは普通列車ですが,近距離交通のS-Bahnだけしか止まらない駅が都心部には多くあるため,各駅停車とはやや異なります(東京圏の東海道線普通と似ているかも知れません)。

時刻表

ドイツの鉄道の時刻表は日本のものとかなり違います。主要各駅では冊子の時刻表が配られていますが,これはその駅と他の主要都市(例えばBerlin, Frankfurtなど)との接続時刻表です。日本のような列車ごとの時刻表は配布されていません。駅に掲示されている時刻表は列車ごとの時刻表で,各列車の停車駅とその停車時刻がすべて書かれています。慣れないと読みにくいですが,慣れれば全ての情報を一度に手に入れることができます。DBのwebサイトでも時刻の検索ができます。どうしても日本のスタイルの時刻表が欲しい場合には,日本で売られているヨーロッパの鉄道時刻表を利用するとよいかもしれません。

切符と運賃

切符の購入方法は3通りあります。

  • 駅の窓口での購入
  • 駅などにある自動券売機での購入
  • webでの購入

駅の窓口での販売はいくつかの特殊な安売りのチケットでは自動券売機・webよりも高い(相談料が別途加算される)場合があります。自動券売機での購入の際にはECカード(デポジットカード)またはクレジットカードによる決済が必要で,紙幣・コインは受け付けないことがほとんどです。webでの購入は,予めクレジットカードまたは銀行口座を設定しておくと自動で引き落としてくれます。ただし出発直前の予約購入はできません。
ドイツの鉄道運賃は高めです。感覚としては日本の倍くらいします(ただし改札がないので途中下車は自由です)。そこで,多くのドイツ人は割引カードを持っています。BahnCardと呼ばれるこのカードは,一定の年額を先に支払うことで,鉄道運賃を割り引いてもらうというものです。1等用と2等用,割引率25%と50%のものがあり,割引率100%のものはそのカードだけで全ての列車に乗ることができます。
しかし最近では,日本の航空会社の予約割引システムのような切符の売り出し(Dauer-Spezial)があり,極めて安い価格で(5割以上の割引率で)切符を確保することができるようになっています(ドイツ全土で一律29ユーロという設定もあります)。ただしこの切符は乗りたい列車に対して設定があるかどうか,その枠が残っているかどうかが不透明で,列車も固定のため事後的な変更は効きません。
これに対し,BahnCardのメリットは,柔軟性のみならず,近距離交通を無料で利用できることにあります。一定の距離を超える切符をBahnCardで購入すると,目的地の周辺の近距離公共交通機関が到着日については無料で利用できます。往復券を買うと出発地・到着地ともに無料になります。コンスタンツはようやく2008年末からこの適用ができるようになりましたが,多くの都市ではこのサービスが使えます。
BahnCardを持たない日本からの観光客は,ユーレールパスの利用が便利です。極めて安い運賃で利用でき,また時刻表さえ確認しておけばとくに何もすることなく(ただしICE-Sprinterを除く)列車に乗ることができます。ユーレールパスは逆に,ヨーロッパに住んでいる人は利用できないため,留学の場合にはBahnCardを買っておくしかありません*3

指定席と自由席

指定されているかの表示は座席の上の電光掲示部分を見る必要がある
日本の列車では指定席と自由席は原則として車両(または車両の前後部分)ごとに決まっています。しかしドイツの場合には指定席は席ごとに決まっています。座席の上に電光掲示板(または紙)で予約区間が示されており,その区間に関しては指定席を指定していない人以外は座ることができません。フランスやスペインなどと違って車掌はまめに回ってくるので,指定席をとらずに指定席を選挙する人はドイツではまれです。
指定席の値段はあまり高くありません。距離が長いときには一応指定しておき,もし空き席でもっと良い席があればそこに移るのがよいでしょう。1等車の場合には座席が埋め尽くされていることは多くはありませんが(2等車の場合には区間によっては立ち席になっていることも多いです),一部のICEでは恒常的に満席になっていることがあります。時刻表でstarke Nachfrageと書いてある列車に乗るときは指定席をとっておいた方が無難です。指定席は通常,窓側か通路側,コンパートメント(個室)かそうでないかの指定が可能です。

恒常的な遅延

ドイツの鉄道はラテン系諸国ほどではないにせよ,極めて遅れが多いです。その理由はいくつかあります。第1は,運行設備に対する投資が遅れていて,信号系統や操車技術に問題があるためと言われています。民営化によってこの傾向はよりひどくなったというドイツ人も多いです。第2は,優等列車=長距離列車という観念が日本と違ってまだ生きていることです。優等列車ほど長い距離を走るため,遅れが発生しやすくなります*4優等列車を待ち合わせる列車もそれに影響を受けて遅れていくために,ドイツ各地で遅れが生じることになります。第3は,ダイヤ上の無理です。スイスと違ってドイツの鉄道ダイヤは駅での停車時刻の余裕をあまりとっていないため,遅れが生じても取り返すことができません。これらに加えて,これまで延着の際の払い戻しのしくみがなかったこともおそらく影響を与えていたでしょう。
ドイツの遅延の特色は,特定区間の特定列車がいつも遅れることです。これまでは経験でしか判断できませんでしたが,ここ最近になってDBのwebサイトの時刻検索で,遅延が出る恐れがある列車にはその表示が出るようになりました。一般論としては,乗り換え時間に15分あれば,よほどのことがない限り乗り換えに失敗することはないです。

車内放送に頼らない

よく知られるように,日本の車内放送は極めて多くの情報を,しかも繰り返し言ってくれます。しかしドイツの場合には案内は1回だけです。IC以上では英語の車内放送もありますが,それ以外はドイツ語のみ,放送設備もお世辞にも優れているとは言えず,聞き取るには慣れが必要です。そこで予め時刻表をメモするなり印刷しておき,乗り換え時間の頃には到着に注意しておくことが必要です。

*1:日本語で詳しくDBのことを紹介しているサイトがここです。留学前に読んでとても参考になりました。

*2:ドイツのICEは必ずしも専用軌道を走るわけではありません。このためICEが300km/hを超えて走る区間はそれほど多くはなく,大半はICとあまり変わらない150km/h前後のスピードしか出しません。そこで,多くの区間ではむしろ「ミニ新幹線」と言った方が適切かも知れません。

*3:2009年からBahnCardは自動更新になり,解約の意思表示を書面でしない限り,勝手に次のカードが送られてくるようになりました。ずっと使いたい人にとっては便利ですが,留学者にとっては不便になりました。

*4:例えばハンブルク発コンスタンツ行きのICとか,ミュンヘン発フランクフルト経由ベルリン行きICEといった,日本人から見れば気が遠くなるような距離を走る優等列車が,ドイツでは多いです。