脱原発決定
ドイツのメルケル政権は6日,2022年末までにドイツ国内の全原発を廃止することを定めた原子力法改正案を含む10の法案を閣議決定した。
法案によると,福島第一原発事故を受けて暫定的に停止している7基と,それ以前から事故のため稼働を停止していた1基の計8基は,このまま稼働を停止する。さらに15,17,19年に各1基を,21年と22年に各3基を,それぞれ廃止する。
ただ,冬場の電力不足に備え,現在稼働停止中の原発のうち1基を,稼働再開可能な「待機状態」に当面置くかどうかについては,検討を加えることにした。
また,閣議では再生可能エネルギー法改正案などの関連法案も決定。太陽光など再生可能エネルギーの普及,送電線網の建設促進などを図る方針を決めた。
読売新聞の昨日付記事からです。内容はこれまで報じられてきた通りのようです。
メルケル首相はかつて環境大臣として原子力を所管していたことがありました。南ドイツ新聞のこの記事では,原子力大臣が脱原子力の首相になったとした上で,政治的に見れば誰が政権についても脱原発路線は今後変わらないとしています。
他方で,フランクフルターアルゲマイネのこの記事では,今回の決定は福島原発事故が原因と言うより,一種の政治闘争であって,イデオロギー対立の問題とします。そして冷静な決断をしなかったことが将来世代のリスクになりうると警告しています。
もともと原発を持たなかったオーストリアに加えて,スイスとドイツが脱原発路線に転じたことで,ドイツ語圏の主要国は全て原発を持たない方向に向かうことになりました。すでに多くの風力発電所(ドイツ)や水力発電所(スイス・オーストリア)が稼働しているこれらの国では,原子力以外のエネルギーによる電力供給体制が一定程度できていることも影響しているのかもしれません。