ernst@hatenablog

Konstanz als Heimatstadt

原子力政策の行方

【ベルリン=松井健】ドイツのメルケル政権は14日,国内の原子力発電所の運転を延長する政策を3カ月間凍結することを決めた。ドイツは昨秋,世界的な「原子力ルネサンス」の流れの中,シュレーダー前政権の原発全廃方針を転換し,原発延命に転じていたが,福島第一原発の事故で,原発の安全性への不安が噴出していた。今後,すべての原発の点検を進め,福島の事故も参考にしながら安全性を新たに判断していくとしている。稼働年数の長い原発が運転停止になる可能性もある。
メルケル首相とベスターベレ副首相兼外相が14日,会見で明らかにした。メルケル首相は,ドイツでは日本のような巨大地震津波の可能性は低いとしながら,「安全性の点検にタブーはない」と述べた。ドイツではメルケル政権の「脱・脱原発」政策への反発も強く,政権の支持率低迷の一因にもなっていたところ,今回の福島第一原発の事故で新政策の凍結を余儀なくされた形だ。

朝日新聞の今日付記事からです。

ドイツの原子力政策

記事にもあるように,ドイツではSPD緑の党政権の時代に脱原発政策に転換し,それは次の大連立時代にも維持されていました。しかし,2年前の政権交代でCDU・CSU・FDP政権に復帰してからは,これを修正する政策に転換しました。最終的に原子力発電から撤退することは変わっていませんが,再生可能エネルギー(erneuerbare Erergie)の技術が確立するまでのつなぎとして,原子力発電所の利用を延長するというものです。日本から見ていると分かりにくいのですが,現政権は原発利用に逆戻りしたという見方は間違っています。またドイツの場合,フランスから電力を購入でき,そのフランスは原子力大国であるという事情も軽視できません。

凍結の意味

今回の発表は,とくに古い原発についていったんスイッチを切って点検するというものであり,上記の政策が大きく変更されたわけではないことに注意する必要があります。
またドイツでは2週間後に,バーデン=ビュルテンブルク州議会選挙が予定されているという事情があります。同州ではこれまで保守系が政権を握ってきましたが,すでに昨年の段階で次の選挙では保守系が勢力を維持するのが難しいと言われていました。1つには,州都のシュツットガルト駅を地下駅にする計画で(この地域としては大規模な)抗議行動が発生して衝突事件があったこと,もう1つはこの原子力発電の問題です。ドイツ南部は伝統的に原子力発電を推進してきましたが,これに対する支持は近時集まりにくくなっているようです。FAZの記事によると,野党のSPDは,今回のモラトリアムは州議会選挙を切り抜けるためのトリックだと批判しているようです。
今回の地震原発の問題で,ドイツでの日本への関心が高まっているようですが,この問題はドイツ年来の政治対立を再び過熱させたようです。