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Konstanz als Heimatstadt

直接民主政の敗北?

27日(日)に行われたドイツのバーデン=ビュルテンベルク州の住民投票で,Stuttgart21に対する賛成票が投票総数の58.8%を占めました。ここ数年続いてきたStuttgart駅の改築問題に大きな影響を与える結果が出ました。


Stuttgart21の完成イメージ
Stuttgart21は同州の州都であるシュツットガルト鉄道路線と駅を大きく変更し,その周辺を再開発する計画であり,計画そのものは約20年前からスタートしていました。現在ターミナル駅(Kopfbahnhof)になっている同駅を日本の駅のような通過駅に変更するとともに,駅周辺の線路をウルムまで高速線用に付け替え,パリから中部ヨーロッパへの高速新線の結節点にするという計画でした。これに対して,駅の工事が開始された昨年頃から反対運動が強まり,デモ隊と警察が衝突する事態が生じていました。今年同州で行われた州議会議員選挙では,長年政権の座にあった保守系(CDU)が敗れ,ドイツ初の緑の党首班の州政府(緑の党SPD連立)が成立していました。この政権がStuttgart21に対する住民投票を推し進め,今回の投票に至っています。
住民投票の対象は州民全員であり,その問題設定の仕方も,「州がドイツ鉄道と締結している費用調達契約を解除することに賛成か,反対か」というものです。聞き方が「プロジェクトに賛成か,反対か」でないのは,そのような聞き方が連邦制との関係などで憲法違反になるからだとされますが,聞き方が分かりにくいという批判は投票前には強かったようです。そもそも同州全体を対象とする住民投票は1951年に同州を設立するかどうか(旧3州の合併に賛成か)の投票をして以来のことです。同州の憲法によると,住民投票の結果州が契約を打ち切る条件は,投票総数の過半数が契約解除に賛成することに加え,最低得票数(有権者の1/3以上の賛成)も上回らなければならず,2500万人の賛成票が必要とされていました。これはかなり高いハードルであり,Stuttgart21の反対派(「賛成」票が必要な立場)はここまでの票数ではなくさしあたり投票総数の過半数の支持を得ることで政治運動を継続したいと考えていたようです。
投票前の世論調査でも55%が契約打ち切り法案に反対(プロジェクト自体に賛成)という数字が出ていたようですが,日曜日の住民投票の結果もこれを裏書きすることになりました。契約打ち切りへの賛成は41.2%にとどまり,反対が58.8%を占めました。反対運動を続け,現在は州首相の地位にある緑の党のKretschmann首相も投票結果を受け入れると表明しています。
Stuttgart21への反対運動は駅周辺の工事着工とともに急激に広がりました。それが同州の政権交代の一因にもなっただけに,今回の投票結果には関心が集まっていました。他方で緑の党を除く主要政党の多くはプロジェクトを支持しており,一般市民の反対運動へのコミットメントも実はそれほど強くないとも言われていました。今回の結果が直接民主政の敗北だと評価するにはまだ手がかりが出そろっていないように思われますが,この結果を受けて反対運動がどのような方向性を辿るのかは気になるところです。