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Konstanz als Heimatstadt

ノルトライン・ヴェストファーレン州議会選挙

昨年のドイツ総選挙後,初の大型地方選として注目された西部ノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙の投開票が9日,行われた。公共放送ZDFの得票率予測によると,連邦レベルでも連立する州与党のキリスト教民主同盟(CDU)と自由民主党(FDP)は過半数を維持できず,敗北した。各州政権の代表からなる連邦参議院(上院)で,メルケル保守・中道政権は過半数割れとなる。
メルケル政権がドイツの巨額拠出となるギリシャ金融支援を決定したことや,減税をめぐる与党内の足並みの乱れが影響した。同州は人口が国内最大の重要州。今後,大型減税や,「脱原発」の見直し計画など重要政策で大幅な変更を迫られそうだ。
得票率予測によると,CDUが戦後最低の約34.5%に落ち込み,FDPは約7%。(共同)

IZAの今日付記事からです。ARDのページによると社会民主党SPD)と緑の党の2党を足しても過半数をとることが結局できなかったため,どの政党が与党になるかはまだ分からないようです。
ドイツは連邦制をとっており,各州に議会があります。各州の政府は連邦レベルとは違う政党の構成を採っていることも多いです。今回のノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州の場合には,連邦レベルでは昨年秋まで続いていた大連立(キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とSPDの連立),ジャマイカ連立(CDU/CSU自由民主党(FDP),緑の党),赤赤緑連立(SPD緑の党・左翼党(Linke))のいずれかが考えられますが,どれになるかは今後の政党間の話し合いによります。赤赤緑の連立はSPD緑の党に拒否反応があるため,それ以外のケースならメルケル政権への影響は最小限に食い止められるのかも知れません。
CDU/CSUとFDPの連立になったメルケル政権の2期目の評判はこれまでのところあまり芳しくありませんでした。特にFDPが強く推進した減税政策に対しては国家財政の関係から批判が強く,またFDPの失業手当・社会扶助(Hartz-IV)に関する発言にも批判が集まっていました。FDPは連邦議会選挙までは好調でしたが,今回の州議会選挙ではあまり伸びませんでした。加えてここ最近ではギリシア支援の問題で,与党には逆風が吹いていました。もともとNRW州はSPDが比較的強い地域でもあり(といってもSPDは前回の州議会選挙よりも議席を減らしていますが),この州議会選挙でメルケル政権の基盤が揺らぐであろう事はすでに昨年の秋から言われていました。
州レベルの政策で最大の争点になっていたのは学校制度改革でした。ドイツの中等教育ギムナジウム・実科学校・基幹学校の3つに分かれるところと,これらが統合された学校になっている(Gesamtschule)ところとに分かれます。一般にCDU/CSUなど保守系が強いと分立型,SPDなど革新系が強いと統合型になっています。NRW州でもそのどちらを採用するかが大きな争点になっていました。もし大連立またはジャマイカ連立が選択されるとすれば,この政策での妥協が見出される必要があるでしょう。
(5/11追記)
その後の報道では,SPD緑の党・FDPの信号連立(Ampelkoalition)の可能性も指摘されています。このネーミングはそれぞれの政党のカラーである赤・緑・黄が信号の色であることに由来して命名されたようです(ドイツでは「青」信号と呼ばず「緑」信号と言います)。ジャマイカ連立という名前も,ジャマイカの国旗の色が各政党のカラーの黒・黄・緑であることに由来しています。他方で世論調査(NRW州レベルの)によると有権者の多数は大連立を望んでいるようです。