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Konstanz als Heimatstadt

西尾勝・地方分権改革

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

第1次地方分権改革の舞台裏が分かります。


全12巻で構成される行政学叢書の6番手として出版されたのが『地方分権改革』です。第1次分権改革の立役者といえる筆者がその舞台裏を含め,地方分権改革の成果と課題を情熱的に語っている作品です。
舞台裏を見ると,各省庁と地方分権推進委員会との戦いというよく知られた局面に加え,地方6団体の意向・希望が強く反映されたプロセスであったことが分かります。

これを要するに,第一次分権改革の成果の範囲は,まず地方六団体の総意に依存したところで大きく限界づけられ,次いで関係省庁が同意した範囲内に限界づけられたということができる。まことに身も蓋もない言い方で恐縮であるが,これが厳然たる事実である。(同書・56頁)

の表現がこれを象徴的に言い表しています。
また係争処理制度の創設(74頁以下)や,教育庁任命承認制度廃止(101頁以下)など,難産の経緯やその背景などがよくわかる印象的な記述が多かったです。
更に,昨今の第2次分権改革についても,税源移譲・市町村合併道州制などさまざまなトピックについての現状と展望が論じられています。地方分権改革の過去と現在,そして未来を見通すのに不可欠の一冊だと思います。