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Konstanz als Heimatstadt

与謝野馨・堂々たる政治

堂々たる政治 (新潮新書)

堂々たる政治 (新潮新書)

読みやすい現代政治論です。


著者は前の官房長官であり,財政再建論者としても知られています。本書はその著者のこれまでの政治的な経験を踏まえた,「耳障りな」本だと著者本人は位置づけています(本書・5頁)。
ただ,読んだ印象ではそれほど耳障りだとは感じられませんでした。むしろこれまでの政治的な状況や現在のことについて率直に語っている部分が多いと思います。小泉政治と安部政治の比較や,大連立の必要性などは,(賛成するかどうかは別として)読んでいてなるほどと思う要素がかなりありました。また改革路線と財政再建との関係,あるいは社会保障の今後の問題についても,著者は選挙民との日々の接触の中から,いわゆる上げ潮路線を批判しています(本書・164頁以下)。
著者のものの見方におそらく大きく影響しているのは「落選3回・当選9回」(本書・第4章のタイトル)という政治的経験だろうと思います。有力政治家でありながら落選もそれなりに経験しているが故に,選挙民の嗜好や世情への感覚が敏感であり,逆にそれが「耳障りな」ことでも主張しなければと言う発想に繋がっているように感じられました。