新北九州空港の行方
2006年3月に開港した北九州空港で9日,乗降客が500万人を突破し,出発ロビー前で記念式典が行われた。
式典には,空港ビルを管理する北九州エアターミナルや各航空会社,関係自治体でつくる北九州空港利用促進連絡会から約20人が出席。くす玉割りに続き,ターミナル社専務の佐藤光俊連絡会会長が「乗降客数が県下の人口に匹敵する節目の日を迎えた。今後も使いやすい空港を目指していきましょう」とあいさつ。500万人目となったシンガポール在住の主婦,広崎泰子さん(43)に花束などを贈った。広崎さんは,大分県の実家からシンガポールに帰るために同空港から東京へ向かうところだった。「きれいでさっぱりした空港なので,今後も使いたいですね」と話していた。
同空港では羽田便が1日15便,那覇便が同1便運航しているほか,国際線として韓国・仁川(ソウル)便が週に3回,各1往復運航している。このうち,那覇便は日本トランスオーシャン航空が赤字を理由に5月5日での廃止を決めている。
乗降客数は当初の見込みを大幅に下回っている。国土交通省は年間客を283万人と試算したが,実際には,2007年度は約127万人,08年度約120万人,09年度117万人(見込み)でいずれも40%台にとどまっている。北九州市空港企画室は「新しい路線の誘致や魅力ある旅行商品の提供などでPRしていきたい」としている。
読売新聞の10日付記事からです。
年間客の試算は過大とは思いますが,他方で1年度での利用者が120万人程度という数字は福岡空港の利用者数(約1720万人)と比べてあまりに少なすぎるとも言えます。また気になる記事として,以下の西日本新聞の1日付記事があります。
新規航空会社のスターフライヤー(北九州市)は31日,2011年7月に,福岡‐羽田線に参入する方針を正式発表した。エアバスA320(約150人乗り)を1日5往復の予定で,13年度には羽田の発着枠の拡充を見込んで,10往復への増便を計画している。また12年度には北九州,福岡と韓国,中国,台湾などアジア主要都市を結ぶ国際定期路線も開設する方針も表明。同日公表した中期経営計画(10年度−14年度)に盛り込んだ。
同社は北九州‐羽田線(11往復),羽田‐関西線(4往復)を運航しており,福岡‐羽田線は3路線目。
福岡‐羽田線の運賃について,米原慎一社長は「北九州‐羽田線(大人普通運賃3万2600円)と同額程度にしたい」と説明。全日空との共同運航(コードシェア)便にする方向で協議する。 福岡線の開設は,今年10月の羽田空港の滑走路拡張に伴う発着枠の追加配分で最大6往復を確保した枠を活用。既存の北九州‐羽田線については,11年4月に1往復増の1日12往復へ増便。13年度以降に13往復への拡充する方針を打ち出した。
国際線については,チャーター便の運航実績がある韓国,台湾のほか,中国を含む東アジアの主要都市への就航を目指し,具体的な検討に入る。12年度に最大3路線,14年度には最大6路線の開設を計画している。
売上高は10年3月期見込みの170億円から,15年3月期は353億円へと倍増超を想定。営業利益は3倍超の17億円を目指す。計画通りにいけば,200人程度の新規雇用を検討する。
福岡・羽田線が加わることで相乗効果となるのか,それとも次第に北九州便が福岡便にシフトすることになるのかは何とも分かりません。今のところスターフライヤーは北九州便に重点を置いていますが,搭乗率に目に見える差が出てきた場合にそれでも北九州便の便数を維持するのかどうかは不透明です。
北九州空港の利用者数が伸びない理由の一つは,空港アクセスの悪さにあります。特に北九州市の西部よりも西側の地域からは高速バスによるアクセスに事実上限られ,その所要時間も福岡空港に行く場合とあまり変わりません。さらに,西鉄バスの事業縮小で,西部からのアクセスバスは北九州市営バス運行だけになっています。他方で同じ西鉄バスの事業縮小で福岡空港と北九州市を結ぶ路線バスが減便になっており,北九州空港のバスアクセスの改善(とりわけバスの乗り継ぎの利便性の向上)を図ることで,福岡空港に向かっていた客層を引き留めることができるチャンスが今やってきているのかもしれません。軌道アクセスの整備が最善ではありますが,資金がかかる上に今の需要ではなかなか実現は難しいでしょう。むしろバスアクセスの改善を検討した方がよいように思います。