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Konstanz als Heimatstadt

佐野眞一・津波と原発

津波と原発

津波と原発

東日本大震災が改めて露呈した日本の社会構造上の問題点を明確に示している作品です。


東日本大震災福島第一原発事故を受けて,過去に出版された原発関係の書籍が増補の形で出版されるケースが多くなっています。これらは,すでに随分前の段階で危機に警鐘を鳴らしていたことが分かる点で優れていますが,他方で今回の原発事故とその背景に関する記述はあまり多くありません。
これに対して本書は,東日本大震災直後に被災地を実際に訪ね,津波原発がもたらしたもの,明らかにしたものを丹念に調査することで,日本社会の構造的な問題点を明確化させている特色があります。特に関心を惹いたのは,原発が多く立地した福島県浜通りでは,江戸時代に他地域からの移民を受け入れていたという話です(本書・125頁)。地域の構造的な特色を歴史に遡ることでより明確に示している点は,類書にはない視点だと思いました。