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Konstanz als Heimatstadt

黒崎にも姉歯関与の建物

姉歯建築設計事務所が構造計算書を偽造した事件で,この設計事務所が構造設計を担当した建物が北九州市苅田町でそれぞれ1棟確認された。北九州市の物件は今年6月に開業したアルクイン黒崎苅田町の物件は今年12月に開業予定の苅田プレモントホテル北九州市と福岡県は近日中に建物を再点検して結果を公表する。
アルクイン黒崎は地上11階,客室数155のビジネスホテル。施主の菅原不動産(本社,北九州市)が長崎屋黒崎店跡地に建設させた菅原第2ビルの一部を構成する。建物は醇建築まちづくり研究所が設計し,竹中・安井共同企業体が施工したが,ホテル棟に関してはノウハウに長けた木村建設(本社,熊本県八代市)が設計・施工を請け負った。耐震基準の7割程度の強度しかないそうだ。
(...中略...)
今後の手順としては,菅原不動産とホテルオオハシがそれぞれ木村建設に対して瑕疵担保責任を訴えて契約の解除を迫り,木村建設は「隠れた瑕疵」の設計図面を作成した姉歯建築設計事務所や,偽造図面に確認済証の信頼を与えた日本ERIに対して損害賠償を請求することになる。しかし,木村建設は自己破産により責任能力がなく,姉歯建築設計事務所にはもとより支払能力がない。損害が全額補償される見込みはほとんどない。

関門通信の昨日付記事からです。[id:AKIT:20051127]でも取り上げられているように,なんと北九州にも姉歯関与の建物があり,耐震性の問題から使用中止になる見込みだそうです。そしてその建物が,以前ここでも紹介した,できたばかりのアルクイン黒崎でした。
このホテルの建設工事はあっという間だったという印象*1でした。最近の工法なのでできるのが早いのかと当時は漠然と思っていたのですが…。
この記事によれば,建築確認を担当したのは,かの有名な日本ERIだそうです。建築確認の民間開放によって,東京の指定確認検査機関があちこちの建築確認を担当するようになったという話は知識としては知っていましたが,こんな近くにそのような事例があり,しかも耐震性の問題でできたばかりにもかかわらず使用できなくなるとは思いもよりませんでした*2


さらに,今朝の読売新聞に次のような記事が一面トップで出ていました。

耐震強度が偽装された疑いのある北九州市のビジネスホテル「アルクイン黒崎」の当初の構造計算書を,設計を請け負った木村建設熊本県八代市木村盛好社長)の子会社が建築主らに無断で,姉歯事務所のものに差し替えていた疑いが27日,読売新聞の調べで浮上した。
子会社側は関係者に対し,差し替え理由を「木村建設東京支店の都合だった」と釈明。当初の計算では1.15メートル四方になるはずだった1階の柱が,その後,0.95メートル四方に変更されていた。
木村建設を巡っては,元東京支店長が,姉歯事務所を個人的な裏金作りに協力させていたと認めている。
構造計算書を差し替えた疑いがあるのは,木村社長の妻が代表取締役を務めている東京都千代田区の「平成設計」。問題のビジネスホテルの建築主からデザイン設計や構造設計を受注したが,平成設計は昨年6月,「社名を公にしたくない」として,福岡市の1級建築士に建築確認申請の名義人になるよう依頼した。
この建築士によると,平成設計は昨年7月,下請けの広島県設計事務所が作った構造計算書を添えて,民間検査機関に申請書を提出したが,同9月,姉歯事務所に再計算させた計算書を検査機関に郵送して差し替えていた。これに対し,同10月,建築確認が下りた。
強度偽装問題が表面化した後に,ビジネスホテルの構造計算書が姉歯事務所によるものとわかり,1級建築士平成設計の担当者を問い詰めたところ,文書の差し替えを認めたという。

建築士の名義貸の問題は,欠陥住宅が社会問題化した数年前にも指摘されていたところです。しかし有効な対策が打てないまま今日にいたり,再び同種の問題を引き起こしてしまったようです。

*1:今朝の日経新聞によれば,建築を依頼した側は,通常は1年かかる11階建てホテルを木村建設が半分の半年で建ててくれるということだったので依頼したと述べているようです。

*2:今朝の読売新聞によれば,新規の宿泊客の受入は停止したものの,利用客の多くを占める長期滞在については,危険性を伝えた上でそれでも宿泊する客には退去を求めないことにしたようです。