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Konstanz als Heimatstadt

苅部直・丸山眞男

丸山眞男―リベラリストの肖像 (岩波新書)

丸山眞男―リベラリストの肖像 (岩波新書)

人間・丸山眞男の実像に迫る作品です。


丸山眞男が語られる際の独特の熱気(「丸山病」(本書・3頁)),あるいは丸山眞男のイメージから一旦距離を置き,丸山眞男という人物がどのような人生をたどり,そこでどのような思想を生み出したのかを丹念に追いかけた作品です。
本書でキーとなっているのは丸山眞男が経験した「異質なものとの接触」(本書・46頁)です。丸山はそれが個人の成長にとって大事だと述べています。それは,高校時代における治安維持法違反の疑いでの拘留や,朝鮮での兵営生活,そして体調を崩して帰国した後の広島での被爆体験です。これらの経験が,戦後の丸山眞男の思想にどのような影響を与えたのか,本書は緻密に描いています。
ある人物の思想の底流を知るには,その思想が生み出されたコンテクストを明らかにすることが最も近道であることを,本書は改めて印象づけています。同時に,直接体験と(間接的な)追体験とのギャップの問題を思わずにはいられませんでした。丸山眞男に限らず,戦時中における強烈な体験は,戦後日本の国のかたちを形成する大きな要素となりました。それを追体験することしかできない(それは幸いなことですが)若い世代にとって,丸山世代の教訓をどれだけ実感を伴って認識することができるのか─その手がかりとしても,本書の描く丸山眞男の姿は極めて示唆に富むと思います。