- 作者: 本山美彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: 新書
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サブプライム問題,証券化,リスクヘッジ,ヘッジファンド,格付機関...と金融を取り巻く不思議な用語はなかなか実感をもって頭に入ってきにくいものがあります。しかし本書はこうした用語をこれまで10年程度のスパンで日本と世界で起きてきた,あるいは今後起きようとしているさまざまな経済問題を素材に説明してくれています。
経済のグローバル化を推進してきた金融サービスの支配権を握ってきたのはアメリカであり,本書はその中で債権の格付をする格付機関にまず注目します。コーポレートガバナンスの番人としても位置づけられてきた格付機関は実は不透明な存在であり,この格付機関によって日本やアメリカの製造業は大きな痛手を受けてきたことを本書は説明しています。またサブプライム問題は単なる不景気の一因ではなくもっと大きな問題を含んでいること,そしてこの問題がアメリカ・ドルによる金融・経済支配の終わりの始まりでもあることを本書は印象づけます。本書の理解によるとサブプライム問題とは短期金融市場の行き詰まり現象であり,結局のところそれはカードゲームの「鬼回し」(本書・29頁)なのだという比喩は非常によく分かりました。アメリカの経済のあり方や金融サービスに翻弄される日本の製造業の様子をここ10年みていて何かおかしいと感じていた問題を,本書は極めて明快に説明してくれています。全てがというわけではありませんが,かなりの経済現象について腑に落ちる説明が付されているように思います。