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Konstanz als Heimatstadt

浜田康・会計不正

会計不正―会社の「常識」監査人の「論理」

会計不正―会社の「常識」監査人の「論理」

企業の会計不正が起こる背景と対策について詳論しています。


著者はカネボウ事件等で最終的に解体に至った中央青山監査法人にかつて所属していた公認会計士であり(現在は,あずさ監査法人),本書は企業の会計不正の実態や背景を分析した上で,どのようにすれば不正を防ぐことができるのかを議論しています。
類書が多い中で,本書のおもしろいところは,会計士が結果的に会計不正に関与してしまう(広い意味での)「癒着」の過程を詳しく論じているところです(とりわけ本書・181頁以下)。クライアントと親しくなると第三者ならばわかるような会計不正に気づかなくなってしまったり,監査よりも指導に達成感や重点を持ってしまったり,その結果身内意識をもってしまうようになるといったことが指摘されています。監査人にとって最も大きなプレッシャーは「過失」を犯したということであり(本書・193頁),財務諸表・監査意見の訂正に踏み切れないということもあるようです。こうした事情はよく考えると,日本的な行政スタイルと言われてきた場面における行政ないし公務員の行動パターンとも似ています。一定の継続的関係の中で人が人をコントロールし続けることの難しさはどの局面にも共通のようです。そうすると監査制度が機能するしくみの探究は,行政法における規制執行の実効性確保の議論にも多大な示唆をあたえることになるのだろうと思います。