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Konstanz als Heimatstadt

寺澤盾・英語の歴史

英語の歴史―過去から未来への物語 (中公新書)

英語の歴史―過去から未来への物語 (中公新書)

英語の過去を踏まえて未来の英語を予測しています。


英語は(教育の年数からみると)日本人にとっては最も馴染み深い外国語のはずですが,謎の多い言語でもあります。例えば発音と綴り字の対応関係がかなり弱く,ある程度慣れてきても辞書で発音記号を調べないと正しい発音になる保証がありません。あるいはdo(does)といった比較言語学的に珍しい助動詞が出てきたりもします。
本書はこうした英語の疑問を歴史をたどることによって明らかにしようとしています。例えば発音と綴り字に対応関係が失われているように見えるのは,発音の変化に綴り字が追いつかなかったことや大母音推移の影響があるとされます(本書・97頁以下)。またdoは本来は使役の意味があったものが一端衰え,16世紀ごろにSVOの語順が固まるとSVの順番を維持するために再登場したとされています(本書・133頁)。
これらを踏まえ本書は英語の将来として,国際語としての地位をしばらくは維持するとともに,簡素化の傾向も強まると見ています。
英語の歴史のみならず英語とフランス語・ドイツ語との関係についても記述があり,西ヨーロッパ言語全般の基礎的な知識・背景を知るのによい本だと思いました。