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Konstanz als Heimatstadt

ドイツの近距離公共交通(2)

ドイツの近距離公共交通は乗り方が日本とやや違います。


(1)では近距離公共交通の経営主体と利用促進策について取り上げましたが,今回は乗り方を取り上げます。

検札と不正乗車

日本の公共交通では駅には入口・出口とも改札があり,車内での検札が回ってくることもあります。バスでは乗るときまたは降りるときに運転手の横にある運賃ボックスに運賃を入れるのが普通です。
しかし,ドイツの駅には改札はありません。入口は複数あることが多く,どこからでも駅に出入りできます。長距離列車など車掌が乗っている場合には検札が来ますが,近距離の場合には検札が来ないこともあります*1
そうすると無賃乗車が日本に比べて容易だということになります。こうした無賃乗車客(der Schwarzfahrer)に対しては,高い罰金をかけることで対応するのがドイツの方式です。コンスタンツの市内バスの場合には,時々検札が行われ,もし正しい乗車券を持っていなかったら40ユーロを支払わなければなりません。DBの場合にはいろいろとルールがあるようですが,正規運賃の2倍,ただし最低でも40ユーロ支払うというルールのようです。日本では間違って普通席の券でグリーン席に座っていても,車掌が移動を促すだけで済むことが多いですが,ドイツでは2等の券で1等に座っていると不正乗車とみなされて支払わされる可能性が高いです。そのせいか,2等の券で1等に乗ってくる乗客を見ることは極めてまれです。
罰金による威嚇は,ある程度の頻度で検札がなければ機能しません。個人的には不正乗車の経験はありませんが,検札が回ってくる路線と回ってこない路線とはある程度棲み分けがされているようにも見え,実際にどのくらいのドイツ人が正しい乗車券を買っているのかはよく分かりません。しかしおそらくは,検札や改札口の維持にかかるコストと不正乗車による損害とを比較して,現在のシステムの方が得だという判断があるのだろうと思います。

公共交通の乗り方

ドイツの街では,バス停にはH(die Bushaltestelle),地下鉄の駅にはU(die U-bahn),Sバーンの駅にはSといった表示がしてあります。時刻表を確認すると,多くは毎時同じ時刻に発車するようになっています。土曜日・日曜日に本数が激減する傾向が一般に見られるので,平日でないときに訪れる場合には注意が必要です。最近では大半の時刻表はネットで検索できるようになっています。
乗車の際のボタン
バスまたは列車が来ても,日本のようにドアは自動で開かないことが多いです(これは長距離列車でも同じです)。写真にあるような緑のボタンがドアの横にあり,このボタンを押すとドアが開きます。閉じるのは自動です。一端閉じてしまうと,緑のランプが消灯し,この状態ではボタンを押してもふつうドアは開きません。日本と違ってドイツでは,遅れてきた乗客を待たない傾向が一般に強いです。
切符を差し込む機械
乗ってすぐにすることは,入口付近にある写真のような機械に持っている切符を差し込んで刻印することです。これをentwertenといいます。これは直訳すると「価値をなくす」という意味です。切符に日付が打たれると,その切符は以降使えなくなる,という意味で価値がなくなります。しかし検札の際に刻印がない券を見せても,有効な乗車券とはみなされず,罰金を払わなければいけません(その意味ではこの操作は「有効化」とも言えるかも知れません)。
降りる際には日本と同じく,車内のボタンを押します。日本と違ってドイツの停留所案内は繰り返さないので,よく聞いておく必要があります(長距離列車でも案内は日本に比べて簡素です)。初めて訪れる場合には,いくつ目で降りるか確認していた方が無難です。

*1:コンスタンツのバスは夜9時以降になると,運転手のいるドアからしか入れなくなり,必ず切符を見せるか運賃を払わなければなりません。この方式は日本の先払い・一律運賃方式のバスに近いです。この時間帯以降は若者が多く,若者はバス代を払わない傾向にあるからだとも言われていますが真偽の程はわかりません。